ロックガールは汽車の中
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汽車が動き始めてから数十分。
ハルは梟に餌をやり、あたしはギターを取り出した。
あたしとハルしかいないからか、ハルはなーんにも言わなかった。よぉーし、練習していいってことだな?!やっほう。
「ハル、その子の名前はなんて言うのー?」
「ソレイユ」
「ソレイユ?フランス語で…太陽だっけ」
「瞳が太陽みたいにオレンジだろ?だからさ」
「へぇ〜確かに。とっても綺麗なオレンジ!」
「母さんがエリンもソレイユに手紙を頼んでもいいって言ってたぞ」
「まじで?!それは助かる!」
「よろしくね、ソレイユ!」と手を伸ばすとソレイユが顔を寄せてくれた。か、かわいい!メチャクチャかわいい!
あたしも来年は梟買ってもらおうかな…?!パパに頼んでみよう。
しばらくすると車内販売のおばあさんがやって来たので、あたしは百味ビーンズとやらを買ってみた。お昼ご飯はママが作ってくれたサンドイッチがあるからね!
ハルは蛙チョコってのを買っていた。箱を開けると名前の通り蛙のチョコが出てきた。はい、文章そのままです。出てきたんです。つまり、動いてる!!チョコレートが!魔法ってスゲー!マジロックだわ!
今にも逃げ出しそうな蛙をひょいと掴んで食べるハル。…なんかグロイね。あっいやチョコなんだけども。でも食べるまで動いてるのはグロイよ。ハルはこれがわりと好きらしい。意外だ。
百味ビーンズはいろんな味のビーンズが入っていて、一つ目はイチゴ味でおいしかったんだけど、二つ目で泥味とかいうワケ分からん味を引いてしまい…OH……口に広がる泥の味…。
いやね?泥は食べたことないんだけどさぁ、なんかこう、あるじゃん。土の上で転んだときにさぁ嗅いだ土の匂い的なそういう感じの!味!それになんか水っぽさが加わって…あぁダメだ、今のあたしでは語彙力が足りなくて上手く伝えられない。とりあえず一つ言える、あれはおいしくない。
三つ目はさわやかなぺパーミント味だったので程よい口直しになりました。四つ目は怖くて食べてません。まだまだたくさん入ってるんですけど……このうち何個がマトモな味なのか…はぁ、スリリングだなぁ。これもまたロックだが…!
お昼も魔法界のお菓子タイムも終えたあたしは、ギターの練習をしながらハルと魔法の話をする。あたしはマグル育ちだからハルのする魔法界の話はぜんぶ面白かった。クィディッチってスポーツと、妖女シスターズってバンドがとても気になる。妖女シスターズ…妖女シスターズ…ちゃんと曲を聴きたいので、落ち着いたら調べてみよう。
それから、ホグワーツで最初に行われる寮の組分けの話。これに関してシェリルさんから詳しい話を聞けなかったのでハルに「組分けって?」と聞いてみた。
「グリフィンドール、レイブンクロー、スリザリン、ハッフルパフ。ボクらはこのいずれかに組分けされる。1種の試験のようなものだが、簡単だから大丈夫だと母さんは言ってたな」
「ふーん…オススメの寮はある?」
「オススメって…寮は自由に選べるものじゃないと思うけど」
「じゃあシェリルさんの寮は?」
「レイブンクローだと聞いてる」
「あたしもそこがいいな〜」
「エリンと同じ寮は嫌だな」
「は?」
選べないって言うわりにお前はレイブンクローに入る気満々かよどういうことだよ。
ハルばっかりズルイぞそんなん。あたしもレイブンクローとやらに入りたい!!入れてください!なんつって。
「組分けと言えば、彼がどこに入るかは見物だな」
「彼?」
「ハリー・ポッターさ。母さんから名前ぐらいは聞いただろ?」
「アー、うん。生き残った男の子…だっけ」
ハリーって子は何から生き残ったんだっけ?そもそもそれ聞いたっけ?
…と思ってたらハルがそれを察したらしい。
「学校だとこの件に関しては喋りにくいからここで手短に説明するが」
「おうよ、ばっちこい」
「彼は『例のあの人』---ヴォルデモートの攻撃を逃れ、生き残った男の子なんだ。ヴォルデモートというのは当時世間を騒がせていた闇の魔法使いで、マグルや自身に逆らうものを容赦なく…殺していた」
「お、おう……相当クレイジーな奴なんだね」
ハルはいつになく真剣な顔つきだった。
「両親がヴォルデモートにやられ、ハリー自身もその場で『死の呪文』により殺されるはずだったんだが…額に傷を負っただけで済んだ。母さんが言うには『強力な守りの魔法』らしいが---まあ、とにかく。そうしてハリーが生き残り、ヴォルデモートは…消え去った」
「消え去った?死んでないの?」
「死んだかどうかは分からない…世間でも死んだという人と、どこかで生きているという人で分かれてるんだ。でもボクは---どこかで生きてるんじゃないかと思う」
「ヴォルデモート…ねえ」
死の飛翔。なかなかにロックな名前してるけど、中身はとんだクレイジー野郎…か。
まだ生きてるとしたら、一体どこで隠居生活してんのかな?