十一

「君、覚えて…!?」
燭台切光忠がひきつった顔をした。
「刀剣男士のくせに意識の有り無しの違いくらい気づかなかったの?」
そう、血だまりの中意識を失いかけた私を見つけ出したのは二人だった。
私の食事を持ってきた燭台切光忠と、気になって様子を見に来ていた山姥切国広。
慌てて止血しようと近寄る山姥切国広に対し、燭台切光忠は既に私に見切りをつけて、次の審神者を呼ぶ算段をつけていた。
その言い争いを朦朧とした意識の中、私はしっかりと覚えていた。


優しかった仲間が変わってしまった。いつの間にか歪んでいた。
薄々気が付いていたことを目の当たりにしたとき、山姥切国広は絶望したんだろう。
主の初期刀として止めるべきだったことが果たせなかった。
だからこそ主に合わせる顔がないと刀解を望んだ。




「…案外、あんたらにお似合いの主なんじゃないのか」
山姥切が己の本体を鞘から抜いて、大きく振りかぶる。
「やめっ…」
「もう遅い」
そして一気に振り下ろした瞬間、悲鳴が上がった。
彼が切ったものは、向こう側の刀剣男士と私を結ぶ霊力の糸。
もともとか細い縁しか結んでいなかったため、私と彼らの間にあった繋がりはそれだけで切れてしまった。
山姥切は私にもう必要のないものだけを選んで切ってくれたのだ。
「うわ、すごいすっきりする!ありがとう山姥切」
「…別に、これくらい何回だってしてやる…」
「うん、僕もすっきりした!」
「俺たちの元主と仲良くしてやってくれよ!じゃあな」
「良き哉良き哉」

皆思い思いの言葉をかけると、一気に走り出す。
不安はまだある。
けれど、ここよりはいい場所になりそうな、そんな予感がして、楽しみになってきた。

「それじゃあお元気で!」
最後に振り向いて挨拶をすると、皆で転送装置に飛び込んだ。


END