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これを恋と呼ばずなんと呼ぶ
10
近くのホテルに入り、一番いい部屋を取る。
直子を押し込むように入れると、真ん中に置かれた大きなベッドに彼女を追いやった。
少しの不安と喜びといろいろなものが綯い交ぜになり、揺れる瞳が藤真を見上げる。
安心させるように、自分のものになったのだと確かめるように。
直子をきつく抱きしめる。
性急にキスを繰り返せば、縋るように腕を回された。
唇を割り、口内を弄り、舌を舐る。
鼻から抜ける甘い声に下半身が疼いた。
弱々しく抵抗され惜しく思いながら唇を離せば、濡れた糸が二人を繋ぐ。
潤んだ瞳の直子に情欲が更に湧き上った。
「…止めるなら今のうちだけど…?」
酒の勢いかもしれないと恐れるあまり、藤真の口から弱々しい警告が出てくる。
「…止めたいの?」
「まさか。」
「私も…同じ…」
クスリと笑われて劣情が理性を完全に凌駕した。
噛みつくように彼女の身体を貪り、自分のものだと赤い印をあちらこちらに残す。
ヒールを脱いだ直子はいつもより少し小さく、服を脱がせば想像していた以上の柳腰にゴクリと喉が鳴った。
俺の下にいる彼女は見たことのない艶やかさで煽ってくる。
喘がせ、強請らせ、乱れさせ…。
ようやく藤真の熱が静まった頃には、直子はベッドの上でぐったりとしていた。
顔にかかる髪をどかし額に口付けを落とせば、くすぐったそうに身を捩りながらもすり寄ってくる。
その愛らしい動きにクックッと小さく笑いながら藤真も直子の隣でまどろみに落ちていった。
フッ…と意識が浮上する。
目の奥が白んだ気がしてぼんやりと開けると、目の前に整った顔があった。
一気に覚醒しガバッと体を起こせば、何も纏っていない自分の身体に唖然とする。
思わず身体に掛けられた布団をたぐり寄せた。
えっと…えっと…
サーっと血の気がなくなっていく頭で昨夜のことを思い出す。
昨日は藤真君と映画に行くことになって。
2人っきりはデートみたいだと、一人で勝手に緊張して。
緊張を解すためにいつも以上にお酒を飲んだ。
いい気分になったところで…藤真君からまさかの告白があって。
気持ちを落ち着かせるためにもっとお酒を飲んじゃったんだよね。
それで終電のがして…それで…?
グルグルと回る頭で必死に思い返していると、突然後ろから首筋を食まれた。
「ゃん…っ…!」
「…はよ。」
肩口から伸びてきた逞しい腕と起きたばかりの掠れた声に昨日の記憶がぶわっと甦る。
名前を呼ぶ色めいた声。
荒々しいキス。
綺麗に筋肉がついたしなやかな体。
翻弄する大きな手。
穿たれた熱。
思い出すほどに真っ赤になった直子を藤真は面白そうに見る。
「直子さん、そんなエロい顔して…昨日のこと思い出してる?」
「えっ、えろい!?というか藤真君、昨日は…」
「覚えてない?直子さん、チョーよかったよ。」
藤真の直球な言葉に頬が熱くなる。
お腹の奥がキュンと反応して、直子は掛け布団に顔を埋めた。
「え?どうした?」
「…何でもないわ。」
くぐもった声で誤魔化していると、トンと肩に体重を乗せられる。
逆らえずにベッドに倒れ込んだ直子の上に藤真は覆い被さった。
そのまま重ねるだけのキスを何度も繰り返す。
飽きるほど繰り返した後、唇を離した藤真は嬉しそうにニッと笑った。
「今日も休日でよかった。直子さんと一緒にいられる。」
…ズルイ。
普段は意地悪でコワくて、でも優しくて。
もう年下だとは思えない。
それなのに、こんなに可愛い笑顔を見せてくるなんて。
直子は困ったように笑うと、藤真の首に腕を回した。
「…これからよろしくね。」
「こちらこそ。」
引き寄せられるように近づいてくる顔に瞼を閉じる。
そうしてまた、直子は藤真に翻弄されたのだった。
2014.06.12. UP
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夢幻泡沫