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Eternal love to you
01
ソイツと初めてまともに対面した時、隣には既に男がいた。
「おっ、竜の旦那。いま帰り?」
「…アンタもかよ。」
「なんだよー、そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃん!」
ねえ?と隣に立つソイツの肩を猿飛が抱くのを快く思わないのは、俺がソイツに惚れているから。
クスクスと笑っている目の前のソイツは俺の気持ちを知らない。
「…アンタの彼女?」
「まあ、そうなるのかな。藤原蒼乃だよ、竜の旦那。」
「Ah〜、どうも。」
「こっちは竜の旦那。伊達政宗。」
「…同じクラスなんだけどね、一応。藤原蒼乃です。」
知ってる。
けど、今まで話すきっかけがなかったんだから仕方ないだろう。
藤原蒼乃、去年から俺が惚れているヤツ。
きっかけは文化祭だった。
藤原がいる吹奏楽部は、俺が所属している野球部の試合の応援に来る。
よくある光景だが、義理がたい小十郎が黙ってなかった。
『俺達も吹奏楽部の発表を見に行きましょう』とか面倒くせえこと言って、ステージを見に行くことになってしまった。
完璧主義者の毛利が率いる吹奏楽部は、質の高い演奏をすることで有名だ。
演奏会は高校生とは思えない程の出来栄えで、親父の仕事関係で招待されるプロのコンサートをよく聴いてきた俺の耳でも楽しめた。
当時の藤原は1年だったのに、メドレーの中でソロを1曲任されていた。
華やかなのに柔らかくしっとりとした音色に、自分でも惹き寄せられているのが分かった。
音楽は嘘をつかない。
藤原も『明るくはきはきとしている』との評判だ。
毛利に対しても一歩も引かずに意見を言うし建設的なアイディアも出すから、アイツも重宝しているらしい。
そして、毛利に文句を言わせないぐらいの演奏技術も持ち合わせている。
だけど俺は知っているんだ。
たまに学院の中にある図書館に籠って本を読み耽っていることを。
部活終了後に一人で真剣に練習していることを。
人目につかないところでこっそり微睡んでいることを。
決して華やかだけでない、静かな面も持ち合わせていることを。
藤原を知ってから惚れるまであまり時間はかからなかった。
自慢じゃないが俺は女に困ったことがない。
その俺が、絶賛片思い中だ。
…笑えねえ。
「じゃあ竜の旦那、また明日。明日はサッカー部がグラウンドをもらうからね!」
「できるもんならな。」
「うわっ、余裕だね〜。行こう、蒼乃。」
「うん。伊達君、さよなら。」
「ああ。」
肩を抱き直して猿飛が藤原を連れていく。
楽しそうに笑って見上げている横顔に、胸の内が黒雲に覆われるのを感じた。
2016.02.04. UP
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夢幻泡沫