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いつか一緒に

06



コンクール初日、音羽はドレスに着替えると控え室から出た。
ベビーピンクのサテン地にスパンコールで薔薇が象られているロングマーメイドドレス。
ストラップレスのデザインで、首には小さいピンクゴールドパールが散りばめられたネックレス。
髪はサイドで束ね、ドレスと共布でできている薔薇の花飾りをつける。

「よっ、日柳。丁度お前を呼びに行くところだったぜ。」
「土浦君、おはよう。」
「おう。」

舞台の方向から歩いてきた土浦が、軽く手をあげて音羽に声を掛けた。
けれど挨拶をしたきり、彼女から目を離さないで不自然に黙ってしまった。

「…おかしい?」

土浦があまりに黙ったままなので、音羽は恐る恐る聞いてみる。

「いや、さすがは日柳…といったところだな。それにしてもその格好、まるで…」

花嫁みたいだな、と言おうとして土浦は慌ててその言葉を飲み込んだ。

「まるで…何?」
「…何でもない。」
「ふふっ。土浦君ってばおかしい。」

そうやってクスクス笑う音羽を見て、彼は顔を真っ赤にした。

「土浦君のそのタキシード、よく似合っているわ。」
「…サンキュ。」

二人は顔を合わせると、どちらからともなく吹き出す。

「どーも照れくさいな、こういう格好。ま、お手やわらかに頼むぜ。そうそう、自己紹介しろって金やんが言ってたぞ。俺ら、顔合わせの時にいなかったからだと。」
「あー…そうかぁ。」
「行こうぜ。」

土浦に促されるように、音羽達は連れ立ってステージ袖に向かった。



「おっ、来た来た。遅いぞ、お前さん達。」
「悪かったな、金やん。」

皆が集合しているところへ急いで寄ると、全員の目が音羽に集中した。

「遅くなってすみません。…あの…何か…?」

音羽も心配になって声を掛けるが、誰も答えない。

「え…と、冬海さんでいいんだよね?私…どこかおかしいかしら?」

音羽は記憶を辿りながら参加者の一人である冬海に聞いてみる。

「あ…あの…おかしくありません。…その…あまりに…お綺麗で、その…」

真っ赤になって言う彼女の言葉に音羽は首を傾げる。

「お綺麗って…私が?やだ、お世辞は要らないよ。」

冬海さんが可愛いわ、と音羽は彼女の肩をポンと叩く。
金澤はほぉ〜と目を細めて音羽の全身を見まわすと、意地悪く笑いながら今度は集まっている生徒を見た。

「…お前さん、学院でトップを争う美人と言われていたが…ここまでとは…。おら、男子共。見惚れてんじゃねぇ!」

その言葉に、その場にいる男子が慌てて視線を逸らす。

「ほれ、二人とも自己紹介だ。」
「2年5組、土浦梁太郎。ピアノです。」
「2年2組、日柳音羽です。ハープを…」

参加する楽器を言う時に、どうしても声が小さくなってしまう。
そんな音羽の自己紹介にハッと彼女を見た男子生徒がいた。

「え?お前、ピアノじゃなかったのか!?」

ぎょっとして土浦も音羽を見る。

「…ピアノだとは一言も言ってないけど?」

音羽が苦笑しながら彼を見ると、何だよそれ…と土浦は笑った。

「ほら、お前さん達も自己紹介しろや。」

金澤の言葉に残りのメンバーが一人ずつ自己紹介をする。

「あの…1年B組の冬海笙子です。クラリネット…です。」
「2年A組、月森蓮。専攻はヴァイオリン。」
「1年A組志水桂一です…。専攻はチェロです。」
「3年B組、火原和樹。トランペットです。ヨロシクね。」
「同じくB組の柚木梓馬です。専攻はフルートです。」

全員が終わったところで、金澤が説明を始める。

「さて…と、まあこの第一セレクションは4回のうちの1回目なわけで。極端なハナシ、今回ビリでも次のセレクションに進めるからな。気楽にいこーや。」
「かなやーん。もっと盛り上げるようなこと言ってよ。」

火原が笑いながら茶化す。
それをさらりと受け流すと、金澤は期待を込めた目で参加者を見た。

「演奏の順番はあとでプリントを渡すが…志水、火原、土浦、冬海…柚木、月森、最後に日柳の順だ。ま、健闘を祈る。」


2013.04.12. UP




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夢幻泡沫