01.始まれスマッシュブラザーズ!




光は分かれ、虚無が訪れ、けれど多くの喜志が集う。
大空のように広大な自由と歓喜に満ちた世界

かつて、魔の手が伸びた仮初の光を纏うしかない選択に追われた世界

輝きに満ちた希望。
その世界は、確かに平和であった。

あるのは、偽装の闘いと、ほんの少しの人々の罵倒。
それを除けば、その世界は確かに平和であった。


しかし、人々は知らない。
世界の全てを、まだ知り尽くせていない。

表世界の人々の目には見えない、世界の裏の姿。
そこは表立った神々しい光の世界とは対象に、禍々しい邪気に満ちていた。



「――世界が震えておる。」


氷点下をも思わせる冷たい冷気を帯びた部屋に、ゴン、ゴン、と重苦しい靴音が鋼鉄製の壁に跳ね返る。
威圧のある声を放った影に続き、後ろからズシン、と重い音を上げながらもう一つの影が忍び寄る。


「わしらの脅威に怯えておるのだ。所詮世界広しと言えど、神の力などここまでのもの」


鼻でふん、と笑うと前にいる影も「違いない」と口の端をクッと持ち上げた。
妖しい笑みを浮かべる二人に対し、静かな音を立てて自動式扉がシュンッ、と開かれた。

今まで冷たい気に満ちていた部屋に更に静寂と緊迫が広がる。


「無駄な話は止めろ」


凛とした、けれど何処か気高いオーラを纏う影に、二人は従者のように頭を下げた。
二人の間を通り過ぎると、前方に聳える無数の電子パネルに触れる。打ち込まれたコードに反応して画面が音を立てて現れた。

現れたモニターに、たった今入ってきた影は楽しそうに口端を持ち上げた。
それは子供のように無邪気で、見るもの全てを凍てる悪魔のように残忍な笑み


「さあ、私達の新世界が始まる。そして…この世界も、―――幕引きだ


狂気に満ちた笑みは、後ろの二人にも広がっていた。

不気味に微笑む三人の視線の先
そこには、各世界に散りばめ分かれたスマブラメンバーの面々が映し出されていた。


―――光の裏には、必ず闇があると言う事に
まだ誰も信じることが出来ずにいるまま








始まれスマッシュブラザーズ!







此処は晴れ渡る青空の下にある小さくも大きい国の中。
小鳥の鳴き声と共に、街の一角では大きな歓声が轟いている。


「えぇええぇぇ!!?」


それとほぼ同時に、街外れの大きな屋敷からも大きな声が響いていた。
木々に止まる鳥達もその豪勢な声に驚き、空へ羽ばたいていった。


「皆が還ってこない!?それってどう言う事!?」
― 舞 ―


驚き声を上げた少女。彼女は舞。異世界より神の気まぐれで連れて来られた異邦人だ。
その対に立つ白銀の髪の青年は困ったように眉間を垂らした。


「うーん、それがねェ。どう言う事か、各世界から拒絶反応が出ているんだ。
そうじゃないメンバーも、還るのに間に合いそうにない者、更には急用の入った者もいるようで…」

マスターハンド


「そ、そんな…。だって、乱闘大会は今日が本番なのよ?皆がいないんじゃ」

「この時期にメンバーへ里帰りの許可を出したのは間違いだったか…。だが、ほら。連絡のついた者からは謝罪の手紙も届いている」
 
クレイジーハンド



忙しそうにリストを捲っているのが世界の統治者であり、舞をこの世界に連れて来た張本人のマスターハンド。
同じく世界の管理者であるクレイジーハンドは、デスクから取り出した紙を数枚舞に手渡す。

受け取った紙は大小それぞれで、そこには見知ったメンバーの名前と文字が綴られていた。


「へぇ…、手紙も届くんだ」

「ああ。世界を跨ぐ時空の宅配便ポストマンが配達してくれる」

「誰だよポストマン」


ツッコミを入れつつ文面に目を通すと、そこには様々な謝罪が書かれていた。


『マスター、クレイジー、舞へ。
先日ゾーラ族に不穏な野党が忍び込んだらしく、そちらを先約することと相成った。
終わり次第急いでそっちへ向かうように勤めるよ。ホント、ごめんな

リンクより』

『舞へ。最近野性ポケモンが頻繁に人里を襲う事件が多発しているらしいんだ。
その調査をオーキド博士から頼まれたので至急向かう事になった。こっち組は全員いけなさそう、ごめんっ。
マスターから内容は聞いてるよ。企画進行頑張って!

サトシより 全ポケモン組含』

『スマブラ界の皆へ。俺達の国の小戦争が規模を大きくしつつある。
ロイとマルスにも聞くと、奴らの国も同じらしい。なので俺達は企画に参加できなさそうだ。
心より謝罪を申し上げる。遠い彼の地より、企画が成功する事を祈っていよう。

アイク』

『メソポタミア文明』


何か最後意味不明なこと言ってる奴がまじってるううう!!この人は何を伝えたかったんだーっ!


舞の疑問にマスターは「さあ?」と首を傾げながら微笑んでいた。
他にも届いている謝罪の手紙に全て簡単に目を通しつつ、舞は淡い溜め息を吐き出した。


「本当だ、ほとんどのメンバーが還れないって言ってる…。
こんなんで今日盛り上がれるのかしら」


吐き出した溜め息と共に頭を描く舞。その彼女の肩に柔らかいボールが乗っかった。


「大丈夫だよ〜!ボク、舞の為に頑張るから!」
 
カービィ


「そうそう。抜けた穴は俺達で埋めればいいんだ!簡単だろ」
 
マリオ



沈みがちな少女に明るく声をかける、新たに現れた二つの影。
舞は驚く事無くその二つの影に振り返った。


「マリオ、カービィ。…そうね。スーパースーターが二人いるものね」


肩から降りて舞に抱っこしてもらったピンクボール、入り口から入ってきた赤い影。
彼らは一体何を話しているのかと言うと…


「さあ!そろそろスタジアムに行こう。君達の闘いを大勢の人々が待っている!」

「我らも後に向かう。午後には間に合うようにするから、先に行っててほしい」

「了解よ。それじゃあマリオ、カービィ。あたし達で先に向かいましょう!」

「ハ〜イ!」

「よし、行くか!」


マスターとクレイジーに手を振った三人は、足早に食堂を出て行った。
カービィを抱え直す舞にマリオが声を掛ける。


「しっかしよく思いついたな。今更だけど、舞とマスターが作ったこの企画、『大乱闘』の企画なんて凄くいいじゃないか!」

「貴方達の闘いを見たい人たちの支えのおかげよ」

「でもそんなアポ今までなかったしな。以前のオールスター大乱闘時のナレーターと言い、舞はいい案を出すよ」

「ありがとう!」

「ねぇ舞〜、今日はみんな来ないの〜?」


ひょっこり顔を覗かせるカービィに困ったように笑った。


「ええ、みんな間に合わないって」

「う〜〜っ、つまんないぃ!みんなと闘いたい〜!」

「そう言わないで、エントリーした挑戦者達と闘えるんだから」

「そいつらが強かったら文句なしだけどな〜」

「マリオっ!」


喝を飛ばされ、マリオは笑いながら走って行った。気づいたカービィも舞から降りて追いかけ、舞も二人を慌てて追いかけた。
スピードは違えど、三人の顔に広がる表情はどれも同じ笑顔だった。






***



++in空中スタジアム++





「あのー、すみません。貴方が舞さんですか?」

「ぅえっ!?あ、は、はい!そうですっ」


控室で座っていたあたしは、突然掛けられた声に異常なほど肩を跳ね上げた。


「わたくし、今回の大会を全国放映するカメラ係に任命されました、ジュゲムと申します。どうぞお見知りおきを。カメラで会場全体を撮影したいので上空を浮遊したいのですが…宜しいですか?」

「あ、勿論でございますですっはい!おおお、お仕事お疲れ様ですっ!」

「ありがとうございます!」


マリオシリーズの敵キャラでお馴染みの、顔のついた雲に乗ったジュゲムがお礼を言って部屋を出て行った。
ジュゲムが出て行った先…つまり、外からは人々の歓喜に満ちる声が聞こえてきて、此処まで響いてくる。
それを聞くと、余計に心臓が大きく鳴りだした。
ああ、どうしよう。ミッキーやマリオ達と居た時にはなんとも思わなかったのに、此処に来て急に心臓が悲鳴を上げだした。
進行役のあたしが失敗しちゃ駄目なんだから。


「(だ、大丈夫かしら…間違ったり、変なこと言ったりしないだろうか。)」


あわよくば緊張のピークに達して専門用語出しまくったりしたらどうしよう!それこそあたしの所為でスマブラメンバーの評判がた落ちじゃねえかああぁぁぁああ!!


ピピッ!

『舞くーん!そっちの現状はどうだい?』


舞が控室でバクバクする心臓を押さえながら待機していると、通信機からマスターハンドの声が聞こえてきた。
気を張り詰めていた舞はその音だけでも肩を跳ね上げ、思わず縋るように通信機を手に取った。


「み、ミッキー!どどどど、どうしようっ。き、き、緊張でっ、腸がパンク寸前っ!!

腸がっ!?胃とかじゃなくて!?』

胃はもう手遅れ…

Σえぇぇぇっ!!?もうパンクしてんのーーっ!?

「冗談だよ冗談…。ひひ…いふふへへへへへ

『舞君怖いよ。怖すぎてもう不審者の領域入っちゃってるよ』


それは自分でもよーく分かってる。
あたし、今の怖さでなら貞子ともお友達になれる気がする。


『大丈夫、落ち着いて。それぐらい冗談が言えれば大丈夫だから!』

「そうかしら…(それ以前に冗談の割合2割ぐらいしかないんだけど)」

『自信を持って。君は出来る子だよ、それは私達がよく分かっている。だから舞君にこの大役を任せたんだから!』

ミッキーはあたしを不安のどん底に落としたいの、救いたいの、どっちなの?

勿論救いたいの☆


ああ、ごめんミッキー。今じゃそのハイテンションも殴りたい衝動を駆り立てる原因にしかならないのよね…!!
通信機を持つ手をプルプルさせると、外からワァァァ!と大きな歓声が聞こえてきた。
それはつまり、企画開始の合図で…。その瞬間、体中の筋肉が収縮した。


「は、始まっちゃった…」

『どうやらそうみたいだね。さあ舞君、一発頑張れ!』

「が、頑張るわ。でもお願いだからっ、お願いだからミッキー達も早く来てね!じゃなきゃあたし、空中スタジアムから身投げするっ!!

『し、死ぬ気で急ぐよ!!(滝汗)それじゃあ!』


最後にもう一度「頑張って」と残し、マスターとの通信が途絶えた。
受話器からツー、ツーと空しい音しか聞こえなくなる。電源を切ると、舞は通信機をテーブルの上に置いた。


「(い、いよいよだ…。)」


鼓動の激しい心臓を押さえて数回深呼吸を繰り返す。そのお陰で幾分か落ち着いた。
叫びそうになる声の代わり、拳を握ることで緊張を解す。
覚悟を決めた舞は、キッと目の前の扉を睨みつけ、それに向かって一歩ずつ歩き出した。


「さあ、舞…―――ファイト!」


自分で自分を応援して扉の一歩前で止まる。
センサーが反応して、シュンッと音を立てて鉄の扉が右に滑った。


―――ワァァァァッ!!!


外に出た途端、鼓膜に響く漲る活性。視界を埋める色鮮やかな風船。木霊に響くのは合唱団が奏でる活気あるハーモニー。
それを一身に浴びる舞は、緊張を上回る興奮を口元に広げた。
円を描くように作られた観客席より遥か上に作られた司会席。ここが本日の彼女の立ち位置。

司会席に上がると、予め取り付けられたマイクの電源を確認して、大きく息を吸い込んだ。


『レディースアンドジェントルメン!…え?これ『メン』?『マン』?…まぁどっちでもいっか。
さぁ、いよいよこの日がやってまいりました。統治者マスターハンド、管理者クレイジーハンドが主催する特別企画!
日々の鬱憤を憂さ晴らせ!『大乱闘スマッシュブラザーズDX』、開催です!!』


わぁぁっ!!と万人の歓声がスタジアムに広がった。高台に作られた司会席にいる舞に向けてのものだろうか。


『司会進行は私、舞が務めさせて頂きますので、皆さまどうぞよろしくお願いします。
さて、それでは本日のプログラムのご説明を致しましょう!』


一旦言葉を区切り、舞が顔を上げて視線を向かわせた場所に巨大な電子モニターが現われた。
実体をもたない画面に、大きな文字の羅列と絵が浮かびあがる。


『先ず、オープニングセレモニーとしてスーパースターの闘いを行います。その後、エントリーされた挑戦者がトーナメント形式で闘っていき、最後に残った強者がスーパースターのどちらかを選んで闘う権利を得ることができるのです!
そしてスーパースターに勝つことができれば…、次なるスマブラレギュラーメンバーに、新たな挑戦者として入ることができます!』


夢のような賞品には、観客だけでなく挑戦者も当然声を盛り上げた。
会場がヒートアップしていく中、更に笑顔の舞の口から進行が進められた。


『さて、それでは早速『大乱闘スマッシュブラザーズDX』の本場へ移りたいと思います!
先ず最初にオープニングパレード、ここで早くも今大会の大目玉バトルをご覧戴きましょう!』


そう言うと、舞は手元のタッチパネルを操作しだした。
文字を入力し赤いボタンを押すと、突如スタジアムの中央にステージが地面からせり上がってきた。
ポケモンスタジアムに似た横一直線のステージ。


『皆さん、お待たせいたしました。スーパースターの登場です!』


バッと右手でステージを指すと、上空で一瞬空間が歪みそこからフィギュアが現われた。
それは青い静電気を纏い、ただならぬオーラを被っている。


『Aブロックより、我が国が誇る世界有名スターが参戦!行きつく国で名を刻む生きる伝説が今ここに!スーパースター、マリオ!!』


舞が手元の青いボタンを押すと、突如フィギュアが光を発した。
呪縛が解かれ、自由になった人形は生きる【人】となり動く。赤が特徴、マリオの登場だ!


『待ち侘びた方の登場ですっ、ですが宇宙にだって勇者はいます!
愛らしい姿に、驚異のブラックホール!星の戦士がとうとう地上にやってきました!Bブロックより、カービィが見参!!』


途端、マリオとは向かい側より現われた歪みから、今度はピンクボール――カービィが呪縛を解いた。
二人の世界的有名なスーパースターの登場に会場が一気に盛り上がる。


『バトル設定は両者ストックが1つずつ、アイテムは術者の能力を極限まで高めるスマッシュボールのみ。あとは体一つのガチンコ勝負となっています!
因みに、バトルの審判としてゼルダ姫とピーチ姫も拝見されていますので、ズルは一切認められません。悪しからずに』


会場よりステージに近い位置に二人はいた。楽しそうに笑い観客に向かって手を振っている方がピーチ、ロングドレスのスカートを持ち上げてお辞儀をしているのがゼルダだ。
二人とも、今日の為に普段とは違うドレスを着用している。


『選手の準備が整い次第バトルを開始します。マリオ選手、カービィ選手、準備ができたら手を上げてください』

「ボクいつでもいいよ〜!」

「………ん、俺もだ!」


マリオは軽くストレッチをした後、カービィはすぐさま手を上げた。
いつでもいける二人に頷き、舞はマイクに向かって高々と声を響かせる。


『それでは参りましょう!『大乱闘スマッシュブラザーズDX』オープニングパレード!
マリオvsカービィ!!

Ready……GO!!


彼女の手が振り下ろされると、二人の勇者が駆けだした!
これから闘う相手だと言うのに、マリオはニィ、と笑みを浮かべてカービィに笑顔を見せた。


「いくぞカービィ!手加減はなしだからなっ」

「ペポ〜!負けないもん!」


それに負けじと明るい笑顔で返すカービィ。二人の拳が交えた瞬間、観客や挑戦者の声援がより一層増した。






**



++in天空界++



地上の一部で繰り広げられている、白熱したバトル。
それを見たいが為に遠方から遥々足を運んだ人々もいるのだが…それは『天空』でも同じだった。

たったったったっ

「はっ…はっ…!」


暗く神聖な部屋に、誰かの急いだ足音が木霊する。
足音は部屋の最奥に眠る、水で溢れた台に向かうと、水に向かって手を翳した。

すると、ポゥ、と仄かな光が辺りを包みこんだ。
そして次の瞬間には、何も映さなかったただの水面に、今しがた闘っているマリオとカービィが映し出された。
光によって照らされた人物の表情が喜々と変わる。


「あ…!始まっ、てる……マリオさん、達だ…!」
ピット



天使の少年はテレビ代わりの水面に映る映像に心躍らせた。
立場上、此処を離れることができなかったピットは、せめて天空から観戦する為にこの部屋に来たのだ。
本来なら自分も、今マリオ達がいる筈の場所に立っていた。スマブラメンバーの一員として出る予定だったのだ…。

残念な気持ちは大きいが、尊敬に値する二人の試合が見れてピットは満足している。


「頑張れっ、そこ…右!あっ…危ない…!」


思わず自らも体を動かしながら届かない声援を送る。
少年の瞳は、その身に纏う純白の服と翼のように、綺麗にキラキラと輝いていた。






**





「いっけ〜!ハンマー!」


ブンッ!とカービィのハンマーが横切りに振るわれる。
マリオは紙一重でそれを避けると、一気に距離を詰めて体に回転を加えた。


「マリオトルネードっ!!」

「あぅわっ!?あわわわわ!」


回転に飲み込まれる前にカービィはなんとか踏み止まった。
攻撃を受けなかったことに安堵の溜息が零れた。


「あぶなぁい…!」

「よく止まったなァ、カービィ!」

『両者とも、全く引けをとりません!しかしどちらとも体力も浪費されている筈、いよいよラストに差し掛かるのでしょうか!』


舞の実況通り、二人の肩は微かに上下に動いていた。
次でラスト…。心の中でそう呟くと、カービィは真剣な顔で駆けだした。


「やーーっ!!」

「うっ!っと……、…んっ?」


カービィの蹴りを腕で受け止めたマリオの視界に、鮮やかな虹色が飛び込んだ。
光を放つ丸い球体…。あれは間違いなく、スマッシュボール!


「っチャンス!!」

「うわぁぁ!?」


カービィの体をジャンプして飛び越えると、マリオは一直線にスマッシュボールに向かって走った!


『あっ、あれはスマッシュボール!最後の切り札を出す究極バトルアイテムに、マリオ選手無我夢中に駆け寄ります!』

「あ〜〜っ!ずるい!!」


カービィがそれに気づいて振り返ったと同時に、マリオのパンチがスマッシュボールに落ちる。
パキンッ!と音を立てて割れたスマッシュボールから輝く光が零れ、その光はマリオの体を包み込んだ。
爆発的に体に力が漲るマリオは、ニヒルな笑みを浮かべると体をカービィに向けて反転させた。


「これで決まりだっ!」

「! や、やばーい!」


瞬時に何をするのか気づいたカービィは空へ逃げようとするが、既にそれは遅かった。
身を低く構え、真っ赤に燃えるマリオの両手が突きだされた瞬間、スタジアム全体を赤く染める炎の波が放たれた!


「くらえ! マリオファイナルーーっ!!


――ドガァアァァアンッ!!


轟音を立てて放たれた炎の波が、カービィに容赦なく襲いかかった。
場外に吹き飛ばされたカービィの体が金色に輝き、なんと、戻ってきた時にはその姿を最初に出てきた時のようにフィギュアに変貌させてしまった。
それはつまり、このバトルの勝者がマリオと決まったわけである。


『決まりましたーーっ!!マリオ選手、見事スマッシュボールと共に勝利を勝ち取りました!
オープニングセレモニーの勝者はマリオ選手です!』


会場に舞の高々な宣言と観客達の拍手喝采が轟いた。
マリオは額の汗を拭い、観客に向かって大きく手を振ると、スタジアムに転がったカービィのフィギュアに近付き土台に手を触れた。


――パァァッ!


「…っう〜〜ん…」

「おい、大丈夫かカービィ?」

「あ〜…マリオ〜〜…。えへへっ、負けちゃった」

「なに、ギリギリの勝利だ。いい闘いだったぜ!強くなったなっ」

「んふふ〜!」


人形だった筈のカービィが、マリオの手が触れた途端、またその体に『生』を宿す。
しかし誰一人それに驚かず。それは舞も同じだった。


『皆さん、大健闘を称えたお二人に大きな拍手をお願いします!』


観客の歓声が大きく響く中央で、握手の手を解いたマリオとカービィが笑顔で手を振る。
会場を一通り見渡し、満足そうに微笑むと舞は手元の電子パネルに触れた。


「(次は挑戦者の耐久組手ね。マリオとカービィを下げないと)」


隣にあるアナウンスマイクのボタンを押してONを確認。
指示を出す為に舞は電子パネルを消して顔を上げた。


『―――……ぇ?』


すると、顔を上げた舞から素っ頓狂な声が漏れた。その視線の先には、歓声から不穏なざわめきに変わった観客が見上げるのと同じ。
―――赤黒い雲が広がっていく空。


「な、何だ?これもショーの一つなのか…?」

『いいえ、こんなシチュは用意してない筈だけど…』

「わっ、何アレ〜〜!?」


カービィが指す赤い空…。雲を掻い潜って巨大な鉄の塊が姿を見せた。
空に浮かぶそれは、間違いなく巨大戦艦。

会場上空に半分以上姿を見せると、戦艦のコックピットが蓋を開ける。その中から、紫色の胞子のようなものが振り撒けられた。


「何〜?」

「カービィ!下がれ!!」


マリオの声に弾かれ、飛び退いたカービィがいた場所に胞子が落ちてきた。
地面についた途端、ゴポッと音を立てて形状を変える。降り注ぐ胞子から、機械のような物が次々と現れる!


「大変だ…!コイツら、敵か!!舞、観客に逃げるように言ってくれ!」

『わ、分かったわっ。 皆さん!各ゲートより早急に避難してください!』


舞の声を合図に、悲鳴を轟かす会場のお客が入り口に走り出した。
我先にと出口に向かって駆け出す人の雪崩の流れに逆らう者はいない。
ただ二つの影を除いては


「ゼルダ!」
 
ピーチ


「えぇ、応戦に行きましょう!」
 
ゼルダ



身軽な動きで飛び出すと、ゼルダは魔法で、ピーチはパラソルでマリオとカービィのいるステージに降り立った。


カッ


「あ〜っ、ゼルダとピーチ!」

「大変なことになりましたね…」

「すぐに排除しましょう!」

「分かりました!では二手に分かれましょう。ピーチ姫は俺と、ゼルダ姫はカービィと組んで敵を……」

なっほあぁぁぁぁあああぁぁああっ!!?


何だ今の悲鳴!?(マリオの心の声)
珍奇声に驚き、後ろから聞こえた声に振り返る。するとそこでは、司会席にいる舞が数名の謎の生物に囲まれていた。


「(予想はしていたけど、やっぱり舞か)」

「舞さん!!」


ゼルダが叫ぶ先で、謎の敵がじりじりと舞ににじり寄ってくる。
顔色を悪くして背中が当たるまで出来るだけ後方に後ずさりながら、舞は必死に両手を前に突きだした。


「まままっ、待って!ちょっと待ってっ!あたし何かした!?
この間ちょーっと三剣士の部屋に忍びこんで寝顔盗撮したり、ちょーっと変態親父どものお茶に塩一号盛ったりしただけで、悪いことなんかちっともしてない筈なんだけどっ!?」

「(Σそれぐらいすりゃ上等だーっ!!って言うかそんなことしてたのかぁぁぁっ!?)」

「舞が襲われてる!助けなきゃ〜〜!!」


恐ろしい裏話に驚くマリオの隣で、カービィが慌てた様子で駆けだそうとした。
しかし、それよりも早く桃色の影が動く。


「はっ、ちゃあ!」


ぶぉんっ!!ともの凄い投球力でピーチ姫がボム兵を投げたのだ。舞に向けて


Σ姫ェェェっ!?

ちょっ舞を殺す気ですかーーっ!!(汗)

「あら、あたしがそんな羽目外すわけないでしょマリオ」


ちゃーんと考えてあるわ!ピーチ姫がにこりと笑みを浮かべそう言った瞬間、舞の後ろが光った。
その光の正体は、魔法の力で瞬間移動したゼルダ姫である。


「さあ舞さん!捕まっていてください!」

「あっ、は、はい!」


言われた通りに舞がゼルダの手を握ると、再びその場が光った。
二人がそこからいなくなった時、到着したボム兵がドカンッ!!と盛大に爆破を成し遂げる。
呆気にとられているマリオは、己の近くに光と共に現われた舞を見て思い出したように駆け寄った。


「だ、大丈夫か舞!?」

「え、ええなんとか…。ゼルダ姫、ピーチ姫、ありがとうございます」

「いいのよ、そんなv」

「ご無事で何よりですわ…」

「また来るよ!」


女性陣が呑気にお礼を言っている間にも、さっきの謎の敵は辺りを占領していた。
次々と現れる敵にマリオ達の眉間に皺が幾重にもできる。


「な、何?こいつら…」

「分かりませんが、今はとにかく迎え撃つしかありませんわ!」

「マリオ!私とゼルダで舞ちゃんを守るわっ。だから貴方とカービィは敵を討って!」

「分かりました!じゃあ…いくぞ、カービィ!!」

「うんっ!頑張る!!」


パンッと手を叩き合わせると、マリオとカービィは敵に猛進を繰り出した。
二人の背中を見つつ、二人の姫は舞の両側を守り、辺りの敵に注意を払う。


「ファイアーボール!」

「ファイナルカッター!」



赤い炎と青い真空の刃が敵に襲いかかる。数体の敵が倒れるが、その後ろから新たな敵が迫ってきた。
二人はどんどん攻撃を繰り返し、敵の数を着々と減らしていく。


「くそっ、なんだこの敵の多さは!カービィ、大丈夫か!?」

「うん!ボクは大丈夫〜。マリオは?」

「俺も平気だ。あっちは…
…!そうだ、姫たちは…!!」


こちらは男二人に加え、さっきも乱闘をしたので準備運動はばっちり整っている。
しかし、もう片方は女性だけの非力メンバー。圧倒的にあちらの方がピンチ


ま、マリオー!助けてェェっ!!

「っ!?舞!!」


今度こそまともな悲鳴を聞きつけ、心配になったマリオは咄嗟に振り向くと…


バキャッ!
ごしゃっ!!


「邪魔よあんた達っ!」

「お消えになってくださいなv」

「た、助けてマリオぉ!この恐怖からーーっ!!


姫からかよおおおっ!!
どうやら舞の悲鳴の根源は、躊躇する様子も見せず敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく姫達にあるらしい。
確かにあれは目に当てられないほど見ていて残酷だ…。彼女も見てて辛いだろう、敵の殺られる姿が。

今すぐにでも助けに向かってあげたい。
…しかし……


「すまん…俺はその恐怖には立ち向かえそうにない…

Σおぉぉいスーパースタァァァァっ!!思いっきり目が合った後に思いっきり逸らすなーーーっ!!!


メタボヒーローは安全圏を選んだのであった。誰がメタボヒーローだ!! Byマリオ)
断末魔も舞の叫び声も、まだまだ止まることを知らず、時は刻々と刻みを続ける。



必死な彼らの上空を悠々と飛ぶ巨大戦艦。
その中に、地上から肉眼では捉えることの出来ないほど小さく、ガラス越しから地上を見下ろしている人物が立っていた。

僅かに艦内で灯された赤い電光の下、鋭く細まった双眸が


「………スマブラメンバー…」


慌ただしい地上とは対に、シン…と静まり返った艦内に、憎悪の籠った恐ろしい呟き声が響き渡る。
地上を見下ろす人物は、八重歯で下唇をギリギリと噛み、口元に一線の赤い鮮血の軌道を残した。


「…許さない……っ」




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