ぺち、ぺちと誰かが私の頬を叩いている。
おーい、と呼びかけるような声も聞こえる。
だけど私はまだ起きたくなんかなくって、うるさいな、だなんて思いながら寝返りをうとうとしたけど、なんだか動きにくくてそれも上手くいかず。
もう起きなくちゃいけないのか。
あまり良くない機嫌の中、ううん、と小さく唸り私はうっすらと目を開けた。
「ようやく目が覚めた?」
「へ、」
目の前に見たこともない男の子を映し、私の目は完全にぱっちりと開いた。
がばっ、と起き上がろうとして、頭にがん、と殴られたような鈍い痛みが走る。
「ううっ……」
そのまま消沈。あえなく元の体制に戻ってしまった私は、目の前の彼がにっこりと笑っていることに気が付き、歪めた眉はそのままに、口を開いた。
「……貴方は誰?」
「王馬小吉だよ!超高校級の総統なんだ」
君は?と聞き返されて、彼の言葉を咀嚼する暇もなく、慌てて答える。
「篠田メルです。私は、超高校級のメルヘン作家なの」
「へえ、篠田ちゃんも超高校級なんだね」
「そう……みたいだね」
改めて、彼の背後を見ると、よくわからない蔦のような植物と、どこか薄暗い天井が見えた。全然、私の知らないところじゃないか。
急に不安がよぎり、縋るように彼の薄い藤色の目を見た。
「ねえ、ここはどこなの?」
「さあね、どこだと思う?」
「……わかんない」
そう言うと彼はちょっと怒ったように口を尖らせた。
なんだか子供みたい、と頭をよぎった考えに、全くその通りだと自分で笑う。
「えーっ!作家なのにそんなんでいいの?もっと想像力を働かせなよ!!」
「そう言われても……」
ちょっと苛立ってしまいそうな言葉も、なんだか可愛く思えて仕方がなかった。
ほら立って、との声に、ゆっくりと寝たままだった体を起こす。
「待って、私膝枕されてたの……?」
「そうだよ!俺がさっきロッカーを開けたら篠田ちゃんが頭から落ちてきて、また気絶したみたいだったからね!にししっ」
何とも痛そうな言葉に、思わず自分の頭を抑える。それでさっきは頭が痛かったのか……。
「重かったでしょう、ごめんね」
「まあ、俺は総統だからね!少しくらいで痺れたりなんかしないよ!イテテ……」
王馬くんが痛そうに顔を顰めたけど、何をしていいかわからず、私はおろおろと彼の顔を覗き込んだ。
「え、大丈夫!?ほんとにごめんなさい……」
とその途端彼はにぱっと笑い、「まあ嘘なんだけどね!」と言った。
「総統たる俺がそんな弱い体してる訳ないじゃん!!」
「う、嘘なの?良かったようなそうでないような……」
あれ、王馬くんってこんな性格なんだ……?と内心首を傾げるも、このままじゃ埒が明かない、と私は無理やり話を変えてしまうことにした。
「もう……。ここは王馬くんも知らないところなの?」
「まあ、ね」
彼は立ち上がり、そのまま私に手を差し伸べてくれたので、有難く借りることにする。
「ありがとう」
「どーいたしまして!」
意外と男の子らしい手なんだなあ、だなんてぼんやりと思いながらスカートを軽く払い、足元に落ちていた本の形をした鞄を拾う。メルヘン作家に相応しい、と言って、私はこの鞄をとても気に入っていた。
「ところで王馬くん、これからどうするの?」
ふと、疑問に思ったことを王馬くんに尋ねると、彼はうーん、と口元に手を当てて考える素振りをしてみせた。
「俺ら以外に人がいるのか探しに行ってもいいと思うけどね」
「じゃあ行ってみる?」
「そうしよっか」
なら、と私がドアに近づくと、ドアが勝手に開き、思わず空いてしまった手を引っ込める。
「ここにも人がいたんですね!」
「あ?やったじゃねえかキーボ!」
白髪に黒い装甲のような服をきた男の子に、背の高くて美人な女の子。
彼らも2人組で行動していたらしい。
取り敢えず中へ行くよう手招きすると、2人はキョロキョロと教室を見回しながら中へ入ってきた。
「やっほー!」
それに楽しそうに手を上げて挨拶する王馬くん。私も、取り敢えずこんにちは、とだけ言って、彼らを追いかけた。
「ここも他の教室とは変わりなさそうだな」
「そのようです」
と2人が言った後、王馬くんの提案によって、私達は簡単な自己紹介をすることになった。
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