2話

「キーボくんが超高校級のロボットで、入間さんが超高校級の発明家……、よろしくね!」

おう、と声が返ってきたが、その声が王馬くんの声でかき消されそうになって入間さんを見ると、彼女は王馬くんの方をじっとりとした目で見ていた。

「へぇーっ!ロボットなんだ!ねえねえ、分裂とかできないの?」
「出来ませんよ!」

王馬くんはキーボくんがロボットだと知るや否や、あの調子だ。まるで子供のように目を輝かせて、キーボくんを追い回している。当のキーボくんは非常に困ったような声をあげているが、私にはどうしようもできない。

「けっ、馬鹿ばっかだぜ……」
「あはは……」

少々口調は荒くても、やっぱり、超高校級の発明家ともなると、男子のやり取りが馬鹿っぽく感じてしまうのだろう。そりゃあ賢い人にあの会話は、かなりつまんないんだろうな…。
尊敬の入り交じった目で入間さんをそっと見やると、どこか残念そうな表情をしているように見えることに、ん?、と首を傾げると、彼女は中指を立ててかなり衝撃的なことを言った。

「俺様の完璧なボディーがあるってのに見向きもしないなんて、ほんっとに馬鹿だな!!そう思うだろ、篠田!?」
「え!?男子じゃないからわからんないかも……?」

入間さんのイメージがガラガラと音をたてて崩れていく。前言撤回。天才とはいえど問題がありすぎる人だった。

しどろもどろになってそう答えると、入間さんははあ、とため息をついたので、それは彼女の欲しかった返事ではなかったらしい。

「普通、俺様の前なら異性とか関係ねえに決まってんだろ……?妄想のしすぎで生身の人間に興味ねえのか!?」
「ええ……。別に入間さんは美人だと思うよ……?」

と言うと彼女はぱあっと顔を明るくした。よかった、これはよかったみたいだ。案外単純なのなもしれない。

機嫌を良くしたらしい入間さんは、ふん、と鼻を鳴らした。

「おいチビ、他の所へ行くぞ」
「チビ!?」
「あ?お前がチビじゃなかったら誰がチビになんだよ。王馬か?」
「そんなこと言っちゃだめだって……!」

入間さんはぐい、と私を引っ張ると、そのまま進んでいく。まあ、私も教室の外が気になっていたし、別に構わないんだけど……。

教室から出る直前、そっと彼らを見ると王馬くんと目が合ったので、急に消えたことにはならないはずだ。軽く手を振り、入間さんのあとを追いかける。

教室から出ると、またしても見たことの無い景色だった。

「つっても、見るところはほとんど見ちまったんだけどな。後はこっちくらいだ」
「早いんだね……。入間さんは、キーボくんと同じところで目が覚めたの?」
「ああ、そうだな。……キーボがロボだって言うからぁ、ちょっと気になっちゃって、そこでエロエロしてたら遅くなっちゃってぇ……」
「へ、へえ……」

色々じゃないんだね……とツッコミは内心で入れておく。いちいち直接言っていたら、こっちの身が持たない気がした。

「ほ、他の人には会ったの?」
「ああ、会ったぜ」

変わりに別の話題を、と思って言うと、彼女はあっけらかんとして答えた。

入り組んだ廊下を入間さんの後をついて行くと、細長い廊下に出た。
これ、入間さんがいなかったら迷っていたかもしれない……。昔から方向音痴との定評がある私は、少し不安になった。

「その人って、やっぱり超高校級?」
「……そうだな。なんの理由があんのかは知らねえけど、俺様が会った奴は全員そうだった」

全員が超高校級……。ぜったいに何かの意味がありそうな気がする……。

ふと、白と黒のチェック柄の扉を見つけて、足をとめる。なんだか、王馬くんのスカーフを彷彿とさせる柄だと思った。

開けようとして、ドアノブを捻る……が、ガチャガチャと音が鳴るだけで、扉は開かなかった。

「あれ?鍵がかかってるのかな……」
「みたいだな……。っつうか、時間の無駄になんだから開ける前に気づけよ!」
「それはさすがに無理だよ……」

扉は一旦放っておいて、そのまま進む。やがて突き当たりにまでたどり着くと、掲示板のようなものがあった。
しかし、そこに貼られている数々のメモは、どれも薄く擦れていて、読み取ることができない。収穫はなしだ。

そのまま曲がると、ステンレスのようなものでできた、大きな扉があった。周りには、緑色の蔦がからみついている。

なんか嫌な雰囲気……、と思って入間さんを見ると、彼女も同じ思いのようで、ドアを開けるのを躊躇っていた。

とそこで、キーンコーンカーンコーン、と場違いに明るい音がなり、2人してびくりと肩を竦める。

体育館にお越し下さい、と伝えるその放送は、暫くすると消えてしまった。

「体育館……。ここみたいじゃない……?」
「そうだな……、言われてみれば体育館のドアってかんじだよな」

えいっ、と入間さんがドアを開け、私もそれに続く。

中には、ところどころ緑が蔓延っているものの、確かに体育館らしいものが広がっていた。



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