01.そよ風とポニーテール(和泉守兼定)
Twitterのとうらぶ学パロ企画提出品




黒板に白い文字が音を立てて綴られていく

少し開いた窓から入ってくる風に揺られ

視界に入ってくる



薄い色のカーテンと


茶色い髪の毛



「せんせー、和泉守の髪の毛が気になって授業に集中できませーん!」



そよ
ポニーテール



「はぁ!?」
「はぁ〜…」


挙手した状態で声をあげれば前の席の和泉守がご自慢の長髪を揺らして勢いよく振り返り
前方では現在授業中の数学教師の長谷部先生が黒板に向かって大きく肩を動かして溜息をついた


「それ挙手して言うことか!?」
「だって、ちらちら視界に入って気になる」
「だからって今言うか!?」
「黒板見るたびに髪がふわ〜って!」

「お前達…、あともう少しで終わるというのに待てなかったのか…?」



授業中ということをお構いなしに話し出す私たちに向かって溜息交じりに話す長谷部先生。
時計を見るとあと数分程で数学の授業が終わるところだった。
気になってしまったものはしかたない。

前の席の和泉守を見るといつもは緩く1つにまとめられた髪が今日は整えられているとは言えまとめられていない。
風が通るたびに長い髪の毛が目の前で踊る。

よくこの状態で授業を受けてきた自分を褒めてほしいくらいだ。



「だって、気になるんですよ!目の前に髪の毛がっ」



――――キーンコーンカーンコーン―


反論しようと声をあげるが授業終了のチャイムにかき消されてしまった。
ノート、筆記用具を片付ける音が聞こえる中、長谷部先生はまたも溜め息をつく。


「…本日は、ここまで。和泉守は髪をまとめること」
「はぁ!?」


『次の授業までにこの範囲の予習しておくこと、以上』と言って教室を出て行った長谷部先生の言葉に意味が分からないとの表情の和泉守を見て笑いを堪えてると『笑ってんじゃねぇよ』と睨みつけられた。
周りが騒がしくなる中、一向に動こうとしない和泉守
どうしたものかと思いつつ次の授業の準備をする。



「ほら、次、美術室行かなきゃだよー」
「・・・・」
「ほら、早く髪整えてきなって」
「……ない」
「ん?何?」
「ヘアゴム、ない…」
「はぁ?」



小さく呟いた言葉に思わず拍子抜けしてしまった。
ヘアゴムがないなんて本末転倒。


「いつものは?」
「…国広が持ってる」
「堀川くん、今日は?」
「…林間学校で居ない」


いつも『兼さん兼さん』と世話を焼いている後輩の堀川くん。
どうやら和泉守の身だしなみは全部堀川くんがやっているようだ。
2年生は林間学校で朝から居ない。
仕方ないと思い、腕に通していたヘアゴムを差し出した。


「はい、今日一日貸してあげる」
「お、おう」


ヘアゴムを受け取った和泉守は後ろ髪をかきあげたが
なかなか髪が上手くまとまらず『あれ?』『くっそ』と小言を呟いて何度もまとめ直している。

ちらりと時計を見ると次の授業開始まで時間がない。

目の前で長い髪の毛と戦っている彼を置いていくのは忍びない。


「ちょっと貸して、やってあげる」


和泉守からヘアゴムを奪い取り、カバンから櫛を取り出して、彼の後ろに立って髪を梳かし始める。


他の生徒は美術室に向かってしまって教室には私と和泉守だけ。

さらりと指の隙間を流れる長い髪。

梳かすたびにシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。

かきあげると見える白い首筋。

耳にキラリと光る赤いピアス。


あれ、こいつこんなに綺麗な顔だっけ?

そう思った時、ゆっくりと動く髪、そして浅葱色の大きい瞳と目が合う。



「おい、大丈夫か?」
「あっ、うん!大丈夫!」



見惚れてた。


いやいや、そんなわけない、だって相手は和泉守だよ
いつも馬鹿話する仲。
綺麗だなんて、見惚れてたなんて。


「っそんなことない!」
「うおっ!なんだよ、いきなり大きい声出して!」
「あ、ごめん。ほ、ほら、出来たよ!!早く行こう!!」
「お、おい!待てって!」


結い上がったことを伝えて、教室を飛び出した。


声に出てしまったことの恥かしさ。

今まで意識してなかった和泉守に対して見惚れていたということ。

結っている時のことを思い出して顔が熱くなる。



次の授業開始まであと3分

(どうか、着くまでおさまりますように)


(2017.10.26  中島)
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