03.夏の魔物(鶴丸国永)
※学パロ
Twitterのとうらぶ学パロ企画提出品。



「あっ……やられた……」


生徒会室に向かう途中に首の後ろがやけに痒くなり手を伸ばすとそこは熱をもちぷっくり腫れていた。


【夏の魔物】



今年始めて、ヤツらの餌となったことに腹が立つ。
さっきの体育で外に出た時かな。
気付いてしまったら気になって仕方ない。


かゆい

かゆい

かゆい


駄目駄目っ、ここで負けては駄目。
ここで負けてしまっては目立つくらいに腫れるし、痕になっちゃう。

でも、少しくらいなら・・・。
今、このかゆみが安らぐならば・・・。

駄目っ!
駄目よ、悪化しちゃう!

自分の中の天使と悪魔が戦っている。
どうしたらいいんだと思った時、ふっと生徒会室にある救急箱の存在を思い出した。
確か、去年の生徒会主催のBBQを開催した際にかゆみ止めの薬を買った気がする。

そうと決まれば、生徒会室に向かう足が速くなる。


 * * *


生徒会室前に着いた時には、かゆみに耐えていたことと早歩きしたせいで額にじっとりと汗が浮かんでいた
そんなことよりも、今は一刻も早くこのかゆみを鎮めないと。

扉を開くと、ヒヤッと涼しい風が頬を撫でる。
額ににじんだ汗がスッと引いていく感覚。
一番乗りかと思っていたけど先客が居た。
窓際の生徒会長の席に座り悠々と本を読んでいた彼が扉を開けた私に気付き本から顔をあげた。


「よっ、終わったのか?」
「鶴…あんた、最後の授業サボったの・・・」
「人聞きが悪いな」



『こっちは最後は担任不在で自習だったんだ』と言って彼は読んでいた本に視線を戻した。
3年生にもなれば就職活動や受験の対策などで自習時間が増える。
そのため、自習時間は教室や図書室など他の生徒に迷惑がかからなければどこで勉強しても許されている。

こいつ、鶴こと鶴丸国永はこの学校の生徒会長のため生徒会室を選んだというわけだ。
生徒会室は生徒会役員くらいしか使わないし、冷暖房器具完備、辞典や資料集など教材も少しながら置いているという最高の穴場だ。
・・・・私も、自習時間使おう・・・。



っ!そんなことよりも!
ハッと思って生徒会室に足を踏み入れた。
そして、会長の机の横の棚を探し始めた。
確か、この戸棚に救急箱を置いた気が・・・。
棚を探していると後ろから鶴がまた声をかけてきた。



「ん?どうしたんだ?」
「さっき、蚊に刺されたの。救急箱にかゆみ止めあった気がして」
「どこ?」
「首の後ろ」
「あー・・・、だいぶ赤くなっているな」



えぇ・・・、そんなに?痕になるの嫌だなぁ・・・。
そう思いかゆみに耐えながらようやく救急箱を発見した。
ふたを開け、中を探すが



「・・・ない」



う、嘘だ・・・。
確かに、去年の私は入れた・・・会費で落としたはずなのに・・・。
ないことに焦り出す。
・・・ヤバい、ますますかゆくなってきた。
思わず首の後ろに手を伸ばしてしまう。
すると後ろから手を捕まれ掻くこと阻まれる。



「うー・・・、かゆい」
「あー、掻くな掻くな」
「む り 、 か ゆ い 」
「 掻  く  な 」



片手を捕まれたので、反対側の腕を伸ばすとそちらも捕まれてしまった。
ム○が見当たらないだなんて。
こうなったら、掻いてもいいと思ってしまう。
止めてくれる鶴には悪いけどかゆいものはかゆい。

しばらくの間『かゆい』『掻くな』という小さな攻防を繰り返していると。
『はぁ〜』と小さなため息が後ろから聞こえた。
呆れて諦めてくれるのだろうかと小さく心の中で思っていると。
捕まれた手をさらに強く握られ、首筋に温かいものが触れる。

そして次の瞬間。



「――――っ!」



少しの痛みとリップ音が聞こえ、首筋の温かみと手の拘束が解かれる。
さっきまで温かさがあったところを押えて後ろを振り返ると。
さっきまで手を掴んでいた犯人と目が合う。



「驚いたか?」



そう言って彼は笑っていた。
何が起きたか理解できないまま首筋を押えて彼を見ることしかできない。


「え、あ、あんた、なに、して」
「赤くなってたからな」
「いや、あの」
「上書きってやつかな」


『かゆみが飛んだだろ?』と笑う彼が何をしたか理解した瞬間。
さっきまでかゆくて熱をもっていたところが、違う意味で熱をもったように思えた。
それでも、頭がついていかなくて言葉に出来ない声をあげていると



「あ、やべぇ、蜻蛉切先生に呼ばれてたんだった」
「あ、あの、鶴っ!」
「ん?」
「えっと、その、」



時計を見た彼はそう言って机の上の鞄を持って扉に向かって歩き出した。
思わず声をかけて呼び止めたがその後の言葉が続かない。

首筋だけじゃなくて顔までも熱くなる。
心臓の音がうるさいくらい聞こえる。

言葉が出なくてしどろもどろしていると
『悪い、帰る時クーラーの電気と鍵頼む』と彼は扉の向こうに行ってしまった。


1人になった生徒会室。


「もう、なんのよ・・・」


あんなことされてまともに言葉は出るわけない。
熱くなった顔を両手で押えて唸る。

ふとさっきまで彼が座っていたところを見ると
ココにあるぞ!と言わんばかりに机の上に置かれているかゆみ止めが置かれていた。
ご丁寧に付箋紙に『驚いただろう?』とのメッセージまでついていた。


「つ〜〜る〜〜ま〜〜る〜〜!!!」


ム○を片手に先程出て行った奴を追いかけた。





(ゲッ!もう、追いかけてきたか)
(つるっ!あんたねぇ!!)
(あっははは、驚いたか?)
(驚いたもなにもっ!)
(あ、首のところ割と目立つな)
(っっ!!)


(2017.10.26   中島)
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