ぼんやりと、#name#は横になり幸福を噛みしめていた。
今まで満たされる事の無かった、Ωとしての幸せに浸っていると言い換えても良い。
全身を包むのは、愛しいαの香り。
先ほどまでジンに抱かれていた体には、未だ彼の残り香が強く残っている。
まるで守られているかの様な安堵感に、#name#はほほ笑みながら、己の腹部に手をやった。
ゆっくりと、己の下腹部を撫でる。
胎内には、まだジンの残滓が残っていて。このままなら子供が宿るかもしれないだろう。
まだ出会って間もないというのに、ジンと子を成すことに不思議と嫌悪感は無かった。
そう思うのは、Ωとしての性質なのかもしれない。けれど、例えそうであったとしても、幸せには変わりない。
意外にも、子供が欲しいと言ったのはジンからだった。
自分は仕事で常に傍にいることが出来ないし、番を寂しがらせて他に男を拾われても困るからな。何て、笑って言っていた。その、普通の笑顔に、何だ。しかめっ面だけじゃなくてちゃんと笑えるんだ。と思わず驚いてしまった。
番契約を結んでからというもの、ジンは更に#name#に優しくなった。
赤井とは、こうしたやり取りをしたことは無かった。そんな暇もなく、彼はアメリカへと渡ってしまったから。だから、こうした普通のやり取りが、#name#にはとても嬉しい物だった。
そうやってまどろんでいると、来客を告げるチャイムが鳴った。
誰だろう。来客の予定はなかったはずだけど・・・と、#name#は立ち上がり外を確認する。
見えるのは、黒いコートと帽子。逆光で顔は良く見えないが、長身長髪でコートを纏ったその姿は、己の番に違いない。
今日は帰れないかもしれないと言っていた筈なのに。何か忘れ物でもしたのだろうか?
そう思いながら、#name#は何の警戒も無く扉に手を掛けた。
その、瞬間だ。
「お帰りなさ・・・!?」
――ガッ!と、扉を掴まれ、ドアの隙間に足がねじ込まれた。驚き、視線を上げれば――・・・
「・・・・随分と、嬉しそうだな」
頭上から響く、低い声。
「な、んで・・・・・」
目を見開く#name#が見たのは――・・・・
「何でとは・・・随分酷いじゃないか」
俺を、
「誰と勘違いしたんだ?」
無表情に自分を見下ろす、冷たく光るグリーンアイズ。
そこに居たのは、かつての番である赤井の姿だった――・・・