夢海
「……海?」
咄嗟のことに少し慌てたが、自分が寝衣であることを確認しすんなりとココが夢の中であると藍毬は理解した

夢ならば海を堪能してしまおうっと周りを見渡すと他に人がいる事に気づく

子供だ。

自分よりも幼い子供が、海を背にしながら水際立っているではないか。
自分の夢に子供?しかもなぜ海を背に?疑問に思い眺めていると子供が泣いていることに気づいた。

ポロポロと落ちる涙、涙は海へと流れていく…

不思議なことにこの海は子供の涙である、とすぐに理解した。

ならば、これ程の海を作ってしまう人物は誰であろう?

好奇心が足を動かした。





ゆっくり、ゆっくりと近づく影

近づくにつれて、まるで霧が晴れていく様に藍毬の脳が、体が、その人物が誰であるか知らせてくる。

急かす足、早くなる鼓動、嗚呼、分かってた。知っている。

あと少し…影が重なりそうになった途端、体に力が入らなくなる。

---目が覚めるんだ

必死にもがくが、体は言うことを聞かない。
それでも、あの子に、あの人に伝えなければならない。

私を救ってくれた…尾形 百之助という男に!

「百!!私が……助けるからっ!助けに行くから待ってて!!!!」

喉が裂けてもいい、叫ぶ藍毬の声に目を見開いた子供…尾形は驚いた表情で藍毬を見て、なにか話そうと口を開く

しかし、その声が藍毬に届くよりも早く海の水が動き出し藍毬に巻付いてきた。

目を開けると、見覚えのある天井が月明かりに照らされていた。

フッと頬が濡れている事に気づく。
寝衣の袖で乱雑に頬をぬぐい、布団にうずくまる。

小さな自分の体を抱きしめながら、再度決意する。

例え過去であっても尾形を、彼の心を助けて見せると…


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