□ □ □
1.
東京、池袋。
そこは、キレた奴等が集まる若者の街だ。
これは、そんな池袋を背景にした、歪んだ愛の物語である。
♂♀
まずは、物語の語り手である私、みょうじなまえの自己紹介をしよう。
私は池袋とは程遠い郊外で、父と2人でのんびり暮らしていた。
母はいない。私が幼い頃に亡くなってしまったからだ。
だからこそ私は、自分が生まれ育った街で、父と助け合って生きていこうと決めていた。
だが、平凡な私の人生は、父親の突然の発言によって大きく岐路を変える事となる。
「上京して欲しい」
父はある日私にそう言った。
話によると、父は仕事で昇進が決まったのだが、その条件として、海外赴任をしなければならないらしい。
急に決まった事なので私は連れて行けないらしく、池袋にいる知り合いに預ける事にしたそうだ。
当然、私は反論した。
お父さんには私を育て上げてくれた恩があったから、せめて親孝行位はさせてほしい。だから連れてって。
私がどれだけ必死に言っても、父は首を横に振る。
なまえ、もう決まった事なんだよ。
そう告げる父の表情は苦しそうだった。
これ以上、父にはそんな顔をさせたくない。
「……帰って来たら、恩返しさせてね」
だから私は遂に折れた。
そしてその日から1週間後ー父は海外へ飛び立ち、私は池袋行の電車に乗ったのである。
池袋に越すと解った時、私は少しだけ、そこについて調べてみた。
東京にあり、若者に人気があるという事だけは知っていたけれどー調べてみて驚いた。
何故なら池袋には、数々の都市伝説があったからである。
黒人の寿司職人、池袋の喧嘩人形、カラーギャングに妖刀、謎の情報屋、首無ライダー。
中でも私の気を引いたのは、『池袋にはヴァンパイアがいる』と言う都市伝説だ。
ヴァンパイア。その存在を、私は本や映画の世界の中でしか見た事がない。
まさか本当にいるとは思わないし、吸血されたいだなんて思わないけど、興味はある。
いつの間にか私は、池袋という街に行く事が、少しだけ楽しみになっていた。
「池袋ー、池袋ー」
車掌さんの声に合わせてプシューッと電車の扉が開く。
途端に、都会ならではの熱気が車内に流れ込んで来た。
この街で電車を下りる人は少なくはない。
だから、人混みに押されて電車から降りられない、なんて事態が発生する可能性だってある。
私は慌ててトランクを掴むと、人の間をぬって何とか駅に下りた。
「はぁ……」
第一ミッション成功。既に体力的にはキツイ。
だから私は都会が嫌いなんだ。
げんなりとしながらも、父が書いてくれた住所を目指して、私は歩き出した。