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2.
「……此処?」
私は、住所と一致するマンションを見上げて呆然と呟く。
何故ならそこは、池袋の中でも高級マンションに値する所だったからだ。
父の知り合いに、こんな所に住める程の金満家がいたとは知らなかった。
何度確かめても住所は合っているので、恐らく間違いは無いのだろう。
私はグッと拳を握り締めると、意を決してエントランスに向かった。
「……嘘でしょ」
部屋番号を確認して更に驚く。
何故なら、メモに書かれていた部屋番号は、どうやら最上階のものらしかったからだ。
父とこれから会う人はどういう知り合いなのか、本当に凄く気になる。
エレベーターに乗って上まで上がり、目的の部屋の前に着くと、私は恐る恐るインターフォンを鳴らした。
ピンポーン。
……。
返事が無い。
え、もしかして外出中?
「……えっ」
試しにドアを押してみると、それは意外にもすんなり開いた。
ちょっと不用心過ぎないか、此処の人。
一抹の不安に駆られながらも、私はそっと中に入る。
玄関にトランクを起き、勝手にスリッパを拝借して奥に入るとー
ソファで人が眠っていた。
「……あのー、」
「……」
ダメだ、気がついてくれない。
ゆっくりとその人に近付いて顔を覗いて見ると、精悍な顔つきをした若い男性だった。
お父さんの知り合いって男の人だったんだ。
それにしても、本当に整った顔立ちをしている。
足も長いし、女の子が羨みそうな位サラサラで綺麗な黒髪だし……正に女の子が思い描く理想のイケメンだ。
少しの間見惚れていたものの、ハッと我に返った私は、その男性を起こそうと肩に触れた。
だがー
「ッ!!」
人肌とは思えない冷たさに、思わず手を引っ込める。
「嘘……死んでる?」
試しに心拍数を確認してみると、ドクンドクンと言う心臓の音は全く聞き取れなかった。
「き、救急車呼ばなきゃ……!」
震える手で携帯を取り出し、電話を掛けようとした途端ー
突然横から手が伸びて来て、パシリと腕を掴まれた。
「……え?」
ドサリ。
気が付いたら私の身体はソファの上で仰向けになっていて、先程まで横になっていた男は私に覆い被さっていた。
「ねえ、ちょっと。
勝手に殺さないでよ」
爽やかな声で、その人は言った。
私は驚きや疑問だらけでパニックに陥っている。
「嘘……!何で生きてるの?
だって……心臓、動いてなかった!」
「さあ?何でだろう」
その人は意味ありげな顔でニコリと微笑む。