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「オールマイトを……!?」


 轟焦凍くんが敵から情報を吐かせているのを聞いていると、何をしようとしているのかがどんどん暴かれていった。
 にしても口軽いな……とは思ったが、こんな明らかな寄せ集めなんてそんなものか。
 何やら誰かの声が何もないところから聞こえた気がしたが、見渡しても何もなかったのでとりあえず轟焦凍くんの様子を眺めた

 轟焦凍くんはそれを聞き終えたのか、何処かへ走り出した。私は食べていた土砂瓦礫を飲み込み、後を追いかけようとした。
 生憎、あちらの方が断然足が速く、あっという間に姿が米粒くらいまでなってしまった。個性抜きにしても、もっと体鍛えないとかな……。

 到着が遅れるかもしれないが、自分が出せる最大スピードでその後を追った。





 私がオールマイト達の元に着いたと思った時、目の前の光景はまさに、敵がオールマイトに攻撃しようとしている瞬間だった。

 足を動かすが、この距離じゃ間に合わない……そう思っていると、出久が物凄いスピードで敵に飛び込んでいった。

 ああ、これはいけない。

 そう思った時には既に能力を使っていた。今までこんなに乱暴な使い方をしたことがない、というほど足からゴミを一斉噴出させた。当然、負荷が思いっきりかかったが、気になどしていられない。
 助けなければ、いけない。

 眼前には、手を大量につけている敵だった。

 私は勢い余り、そのまま衝突してしまった……というよりも、抱きしめたような形になっていた。腐らせようと思ったが、今までにないほどの急激なストック消費により、個性は全く持って発動しなかった。そのせいか気持ち悪くなってきている始末だった。
 敵は出久と私というイレギュラーな行為によって一瞬怯んだが、それも叶わず出久と私にその手で触れようとした瞬間

 重い銃声が、何発か聞こえた

 その後、思いっきり私は殴り飛ばされた。激しく地面に叩きつけられ、一瞬呼吸を忘れるほどだった。
 朦朧としていく意識の中、遠くからみんなの声が聞こえた。視界がかすれてよく見えないが、せめて無事な様子を見たい。その一心で必死に身体を動かそうと鞭を打つ

 とてつもなく痛むが、多少顔を上げるくらいなら。そう思い、うつ伏せになっている顔を誰も気がつかない程度だが上げることができた
 くそ、馬鹿みたいに足も背中も痛む。あの日以来の、久々の、敵だった。

 かすれてよく見えないが、薄れゆく意識の中見た光景は

 倒れているが生きている出久と


 どこか、様子がおかしいオールマイトだった


 しかし私の疑問は私の意識と共にシャットダウンしたのだった。





 それから目が覚めたのは、またもや保健室だった。
 以前見たことがあるような天井を見て、ああ保健室なんだ、と察した。おそらくリカバリーガールに手当てをしてもらったであろう足を見ると、包帯をグルグルと巻かれていた。これ歩けるかな……

 体を起こそうとすると、背中に痛みが走りすぐにやめる。確かリカバリーガールは小さな傷を治すのはしないはず。つまり、この背中の打撲はそこまでのものではないようだ。
 どうしようか、と考えるとカーテンが開いてリカバリーガールが少し不機嫌そうにこちらを見ていた。

 それからの流れは早かった。ブツブツと叱られながら傷の状態を説明され、しばらくは足から出すのを控えろと言いつけられた。着替えや荷物は既に運ばれており、家に連絡したらしく兄が迎えに来てくれるとのこと。
 うーん、迷惑かけたくなかったんだけどなぁ……。

「……あの、ところで出久とオールマイトは」
「……はぁ、無事だよ。あんたら以外の生徒はほぼ無傷だ。全く、無茶するんだから」
「あはは……」

 その言葉を聞いた私は安堵したのか、全身の力が抜けたのがわかった。もう安全だというのに未だに力んでいたのか、と我ながら呆れてしまった。それと同時に再び眠気が訪れ、リカバリガールは察したのか来るまで寝てな、と言ってくれたので、目蓋を下ろしたのだった。


 後日は臨時休校となったが、どのみち兄が憤怒しているので家から一歩も出ることは許されなかった……が、休みだったので多めに見ていたけれど、流石に色々としつこかったので、午後に私がブチギレて口論をした結果勝った。久々に喧嘩をしたので疲れたし怪我にも響いたけど、気持ちはスッキリしたのでいいか。


 何かズグリ、と痛んでいた


ー痛みー







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