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目的地にたどり着くと、そこはまるでアトラクションのように事故や災害を演習できる場所だった。
スペースヒーロー「13号」が色々と説明を始めてくれた。
「その"個性"でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
「ええ…。しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう"個性"がいるでしょう」
その台詞に反応した私は、少し俯く。制御できなかった頃に触れてしまった人。腐ってゆく足。きっと、私が今本気で個性を使って人に触れたら、その人は……。
そこまで考え、強く手を握りしめ、13号さんの言葉を一つ一つしっかりと受け止める。この人も苦労をしてきたであろう方。さすがというか、説得力がある
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上!ご清聴ありがとうございました」
私の、個性を。救ける為に。
何度も心の中でその言葉を反芻する。この場で、私の個性の使い道をしっかりと理解しよう。
私は一体、どんなヒーローになりたいのか。それがきっと具体的に見えてくるはずだから。
……もう、あんなことを言われないようにするために。
そう決意した矢先、相澤先生の大声が耳を劈いた。
「動くな!あれは敵だ!!!!」
敵、というワードで、あの日のことを思い出す。運良く逃れきれたが、対峙して感じた。圧倒的に場数が違く、今でも思い出すと背筋が凍る。
そして今。眼前に現れた敵の数々を見ると血の気が引いていくのを感じた。
「……っ!」
周りの人たちが何か喋っている。しかし、どの言葉も、全く頭に入らなかった。手を握り締めていると、先生が勢いよく敵に向かっていった。
その姿を見て、激しく頭を叩かれたかのような衝撃を受けた。
私は何のためにこの場にいる?
あの日、そして今までずっと、ヒーローになりたいために立っているんだ。
怖がってなんかいられない
朝からゴミを食べて体内にストックは十分。今なら技を仕掛けることはできる、と思っていた時、私たちの目の前に黒い霧のようなものが現れた。そいつの言葉は、とても敵らしく、そして最悪なことだった。
そして、どんどん広がっていく目の前の黒い霧から逃れることはできず、覆い飲まれてしまった。
ー
「……!!?」
飛ばされた場所は少し上空で、急いで個性を使いゴミを放出し、衝撃を和らげた。ヒーロー基礎学あるからってちゃんとゴミ摂取しといて正解だったな……。
周りの状況を確認しようとすると、大勢の敵が溢れかえっていた。……これはまずいな。
そう思うと、ヒヤリ、とした空気が肌を掠めた。足場を見ると土砂がどんどん氷で凍っていき、私の足にもかかってしまいそうだったので、近くにいるであろう彼に向けて声を上げた。
「(この能力は……!)と、轟焦凍くん!」
すると氷は勢いを止め、その隙に私は足からゴミを放出し簡易的な高台を作った。
「……悪いな」
「う、ううん!……それに、ありがとう!私だけじゃこの量相手するの…無理だったし…」
凍っている敵を見ると、やはり彼の個性は半端じゃなく強いということを改めて感じる。
ズカズカと敵に近づき、話をして聞き出そうとしに行った彼は、少し悪そうな顔をしていた。
私は話の内容を少し離れた場所から聞きつつ、辺りを見渡す。無闇矢鱈に敵に近づくのはできないし、轟焦凍くんを置いて何処かへ行くのも危険が高すぎる。
さて……これからどうするべきかな……。
小さくため息をついた後、とりあえず土砂や混ざっている建物の屑に手を伸ばし、一齧りした。
ー危機ー
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