好きな人

「デーイーダーラー」

「…また捺、おまえかよ、うん」

夕方の部活活動中にいつもそいつはやってくる。オイラが絵を描いていようと、粘土で芸術作品を作っていようと、いつも自分の話をしにやってくる。

「またとはなんだ。可愛い幼なじみが来てるのに」

「可愛い?誰が?」

「わ、た、し!!」

でっけー声で強調してきやがって。
オイラは粘土で次のコンクールに出す作品を作ってんだから集中してぇっつーのによ。

「おまえさ、毎回毎回部活中に来んなよ。オイラも作品作りで忙しいんだよ、うん」

「デイダラの作る作品てさ、意外にかわいいよね」

話聞いてねーな、こいつ。
…まぁ、いつものことすぎて慣れたけどよ。

「デイダラの夢ってやっぱり芸術家なの?」

「なんだよ、いきなり」

「1番叶えたい夢ってさ、中々叶えれないものじゃない?」

粘土で作った鳥を触りながら切なそうな表情になった捺にオイラは躊躇なく突っ込んだ。

「また旦那の事かよ」

図星をつかれて笑う捺。
かれこれ1年は旦那の事で悩んで、おんなじような質問や話を繰り返してるぜ、うん。

「そんな悩むなら一度告ってみればいーだろ」

「それができないから相談しにきてるんだよ」

オイラには気を使うって事もないくせに旦那の事となるとこれだ。

「好きな人がいないデイダラちゃんにはこの気持ちがわからないかな〜」

「……そろそろ旦那が大学おわる時間だぞ」

オイラが一言そう告げると、机にだらってしていた身体が飛び起きた。時計を気にしながら、帰る準備をする捺。
サソリの旦那の大学はすぐ隣だから、捺はそれに合わせていつも学校を出る。待ち合わせしてる訳じゃない。本人曰く、偶然を装って一緒に帰る作戦らしいが、バレバレだろうな、うん。

「デイダラ、ありがと!また話聞いてね」

「ヘイヘイ。いいからさっさと行け」

作り途中の作品から目をはなす事なく捺に言葉をかける。バタバタと走る音がオイラの耳に聞こえた。走る音が一旦止まり、デイダラ!と大きい声が響いた。
その声で、後ろを振り向くと何かを投げられそれを受け取る。缶コーラだ。
オイラが受け取った事を確認すると捺は笑顔で言った。

「芸術活動もいいけど、無理しすぎないでね!」

その言葉だけを残し、またね!と笑顔で帰っていく捺の後ろ姿を見送った。


「…無理するに決まってんだろ」

1番叶えたい夢が叶わねぇなら2番目くらい叶えなきゃだせーだろうが。馬鹿野郎。

サソリの旦那がいるかぎり、オイラの1番叶えたい夢は叶わない。