躊躇えば失う、

春島、エウロ島。
治安も良く、物価も安定していて何より海賊にとって敵である海軍が多くない。

そんな島に上陸を果たしたハートの海賊団はローとペンギンの支持の元、物資や食材の調達、酒場の確保に向かっていた。

船番に残されたリリアとべポ、そして見張り台にはコック兼戦闘員のバン。
ペンギンとローは探索を兼ねて島へ行ってしまい、キャスケットはペンギンの嫌がらせか何かで一番大変な医療品の買い出しへ宛がわれ広い島のどこにあるかわからない店を探して歩き回っていた。

船尾はべポが見てくれているため、リリアは船内のチェックをして甲板に出る。
上の見張り台ではバンが望遠鏡片手に水平線に目を向けていた。

リリアは梯子を使って上まで上がるとバンにあまり強くない酒を渡して話しかける。


「平和ですね」
「確かに、この島は海軍も少ねぇし治安も良いから余計だな」
「今回はゆっくりできそうですね」
「前回は海軍に追っかけられて、前々回は賞金稼ぎ、前前々回は…えーと?」
「同業者が騒ぎを起こしてそのとばっちりでした」
「あぁ、そうだったそうだった。船長が止めなきゃあんな下っ端、ぶっ潰してたのになぁ」
「ふふ、バンさんは戦うの好きなんですねぇ」
「ま、嫌いなヤツはいねぇだろ。特にこの船には、な」
「…………」

バンは意味ありげに笑うとちらりとリリアを見る。
今日は珍しく帽子を被っていたリリアはもう一度帽子を深くかぶり直すと笑顔で、何のことですかねぇ?ととぼけて見せた。

と、その時、べポの敵襲を知らせる声が耳に届いた。

それからの二人の行動は早く、バンは側に置いてあった電伝虫でローに連絡をして、リリアは見張り台から飛び降り、べポの元へ走る。

「べポ!距離は?!」
「リリア!あと10分もすれば戦闘になりそう!数は30てところ!」
「キャプテンには連絡済み。船内に人は残ってないから実質私達だけ」
「じゃあ久しぶりに三人で戦闘かな?」
「そうなりそうだね」

島が近いなら尚更、殺気を隠し、上手くやらなくてはならないということに頭が回らない相手に本気を出す方がどうかしてる、という考えなのか、嬉々と敵を待ちわびるべポ。その反面、漆黒の瞳で射抜くように無表情で敵船を見つめるリリア。

そして臨戦態勢になったべポとバンは乗り込んできた敵を片っ端からなぎ倒していく。
べポは得意の体術、バンはコックらしく戦闘用のナイフや刃物を用いて。
一方のリリアはいつの間にか見張り台に上がって黒い銃身のスナイパーライフルを構え、べポやバンを狙う敵を仕留める。

使用している弾丸は先が割れて広がっているホローポイント弾という弾で、命中すると体内を掻き回すように入っていくため、傷口は綺麗だが体内がミンチ状になるというえげつない弾だ。
それ故、当たった敵は皆叫び声を上げ、痛みにのたうち回る。

狙撃手がいると敵が理解した時点で弾を替え、7.62mmのライフル弾を敵の体に狙いを定めて引き金を放つ。

的確に、二人を狙う敵を撃てるのはやはりリリアが銃の扱いに慣れているということもあるのだろうが、それよりもリリアの天性の才能によるものだろう。

ホークアイ(鷹の目)。空間認識能力が高く、全体を映像として脳内で再生できる彼女だからこそ、味方が攻撃される前にいつ、何処が絶好の機会なのか把握でき、その前に仕留められる。

15分もしない内に粗方の敵は片付いており、そこへ連絡を受けたローやペンギン、買い出しに向かっていたクルー達が戻ってきた。
優勢になるハートの船で、リリアはすっと視線を巡らせる。

「……キャスがいない」

ハッとして島へ目を向けるとリリアの漆黒の鷹の目は最大限にその能力を活用し、島の全体図を完成させる。
その一角、裏路地で荷物を抱えて交戦中の敵の仲間と思われる男達に襲われているキャスケットの姿。

「チッ!」

いつもの穏やかな雰囲気など無くなったリリアはスナイパーライフルをキャスケットの方へ向けて狙いを定める。

脳内で再生されているその映像は鷹の目だけで成せるものではなく、新世界で言う見聞色の覇気を組み合わせて出来るもの。リリアはそれを勘だけでやってのけたのだ。

スコープから見える光景に集中し、引き金に指をかける。
キャスケットは少しずつ退路を作り、船へ戻ろうと奮闘していた。

瞬間、リリアの愛用の遠距離用ライフル、ウルティマラティオPGMへカートiiの引き金を引いた。


そこに躊躇いなど無く

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