生き続け死に続ける
いつもと同じはずだった。
1600人もいる俺たち白ひげ海賊団に挑んでくる馬鹿な奴らを蹴散らして、戦利品を運んだらその後は飲めや歌えやの宴。
決まったようなものだったのに。
敵も粗方片付け終わって残り少なくなってきたその時だった。
目の前の敵を倒して、嫌な予感を感じて、ふと左を向けばそこには銃を構える男がいた。
銃口は真っ直ぐとジオンに向けられていて、その一瞬ですべてを理解した俺は走り出した。
早く、早くしないとジオンが。
それでもその銃口から放たれる弾をどうにかすることもできなくて、ジオンは俺の目の前で撃たれた。崩れ落ちるジオンの体。
服は鮮血に塗れて、赤く紅く。
スローモーションのようにゆっくりとした時間がどうしようもなくもどかしかった。
「―――ジオンッ!!」
名を呼んでもジオンは応えない、いや、答えられないのか。
自分でも初めて聞くような声が出た。
ジオンを撃った奴は俺が一瞬目を離した隙に他の家族に殺られていた。
ジオンの体から広がる赤い液体。嘘だ、ジオンが死ぬ筈がない。だって約束したんだ、長生きするって俺より先に死なないと。隊長格とやり合う程のお前が、強い筈なのになんで殺られてンだよ。おかしいだろ、いつものジオンならあんなの避けられたはずだ。なのに、嘘だろ?こんな簡単にお前は俺を置いてくのか。
「ジオン……頼むから置いて逝かないでくれ……」
血の気が失せていくジオンの体を抱き、傷口を抑える。
周りは慌ただしく動き回っているし何を言われているのか俺には理解できなかった。
なんで医者が来ねぇ。なんでジオンを助けてくれねぇ。
なぁ、なんでだよ?ジオンはまだ助かるだろ?なぁ、助けてくれよ!
「お前がいなきゃ、俺は……!」
死なないでくれ。
俺を置いて逝くなんて、そんなの許さねぇ。だって、まだ何もしてねぇじゃねぇか。
手を繋いでデートする約束も俺が作ったデザートでジオンが淹れた紅茶でおやつしようって約束もお前の誕生日も何もしてない。
朝は一番におはようを言って俺の作った朝飯を食って夜は最後におやすみのキスもこれからあるはずだった毎日をお前と二人で過ごそうって、そばにいるって約束したのに。果たせない。
嫌だ、嫌なんだよ。
"これから"にジオンがいなくなるなんて、
「……ジオン……、お前がいないなんて、考え、られね、んだよ……ッ!」
ジオンの手がコトリ、と音を立てて床に落ちた。その音が妙に耳をついた。
ジオンが微かに口を動かしたような気がしたけど掠れて最期の言葉でさえ満足に聞いてやれなくて、そして最後に絶望がやって来た。
ジオンが、死んだ。
そう理解した瞬間、俺の目に見える景色から、音が、色が、すべてが消えたような気がした。
空の色や波の音も、家族が何かを言っている言葉も、ジオンの柔らかい体を抱く自分の感覚でさえ、すべてが、消えた。
どうして、どうしてなんだよ?もっと早く気付いていれば、ジオンは死ななかったのに。なんで俺は横たわるジオンを抱きしめている。なんでジオンは笑わない。
なんでなんで、ってそんな疑問が頭を占めていく。いつもなら何も言わなくても勝手に抱き着くなりしてくるのに、なんで、なんで、こんなにも。どうして、俺は涙が溢れるんだ。
どうして俺は、ジオンは、こんなに血塗れなんだ。
生き続け死に続ける
(生き続けて、死に続ける)
(どうして俺は生きてるんだ)
(あぁ、これが俺の地獄なんだと知った)
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