永遠の箱庭


猫の恩返し


 子猫が一匹、様々な魔物が道歩く道路にポツンと一人いた。可哀想に親猫と離れたのか、にーにー、と鳴いてはその場を動けずにいつ踏まれても轢かれてもおかしくはない。
「あ⋯⋯猫」
 そこにたまたま通りかかったのは人間界から魔界に来た交換留学生、カミカゼトオル。彼女は、すぐ様猫を見やると、急ぎ足で人(?)ゴミ混みを掻き分けて子猫の前にたどり着くとそっと抱き
上げた。
 トオルにとっては何も得をすることをないが、猫を見るといつも自身が付き纏っている悪魔を思い出して、無視する気にもなれなかったのだ。
「キミ、迷子?だからと言って人(?)が多いところにいちゃだめだよ。まぁ、実は私もなんだよねぇ」
 そう、トオルも親猫⋯⋯もといサタンと買い出し中に逸れてしまったのだ。彼女はとりあえず、人混みから抜け出して、近くの暗い路地に入る。暗くて幽霊ゴーストが出てきそうだなぁと思考を巡らせれば彼女は静かに鳥肌を立たせた。
「おい姉ちゃん人間か?」
「ひやぁ⋯⋯なんだ、びっくりした⋯⋯下級悪魔かぁ」
 突然後ろから聞こえた声に驚いて、猫を抱く腕が解けそうになるが、反動でぎゅっと抱きしめれば子猫はうにゃ? と心配そうにトオルを見つめる。
「人間なら話ははぇー!!!俺、丁度腹をすかせてんダァ!」
「うわぁ、キミ、私に目をつけたのが運のつきってところだね」
 トオルは先程とは違い冷めた目で目を伏せる。
 一ミリもその場を動かず、臆さないトオルに、変わった人間だと下級悪魔は思っただろう。だが、トオルは嘆きの館にいる悪魔全員と契約している。呼ぼうと思えばいつでも呼べるし、本人は渋い顔をしているが、リリスの子孫である彼女に手を出そうとするのであれば彼ら何兄弟が生きて返すとも思えない。それに、今日、共に買い出しに来たのは、憤怒の──
「はぁ?!何言ってんだテメェ!」
「バカだねぇ、ほんとバカ。ただの"人間"が魔界にいる事が可笑しいって思わないの?ヴァァカ」
トオルは下級悪魔に向かって表をあげれば、口元を不気味に吊り上げて、所詮ゲス顔と呼ばれるものをし、下級悪魔を煽り、それに乗った悪魔を確認すると小さく息を吐いて「喧嘩を売ったのはキミ
だよ?」と今度は天使のような微笑みで悪魔を見やった。
「⋯⋯最初からこうすればよかったなぁ。"サタ
ンくん"私はここだ。⋯⋯早くきてくれ。私が下級悪魔に食べられてしまう」
――ちなみに、子猫も一緒さぁ。と付け足せば、トオルの大好きな緑色の炎が彼女を守るようにして囲む。
トオルはそれを見て目を輝かせれば目の前には炎がだんだん大きくなって、炎が消えるとそこにはいつの間にかサタンが立っていた。
「ヒッ、お前⋯憤怒の!」
「邪魔だ。分かったら消えろ。二度と俺たちの前に現れるな」
サタンがそう言うと、幽霊を見たようにすぐ様逃げていく悪魔を見て、トオルはサタンの後ろで「ヒューかっくいー!」とわざとらしく言うと、彼はため息をついてトオルを見る。
「全く、君はすぐ猫みたいにどこかに行くな⋯⋯」
「あは、ごめんごめん。でもね、この子を見つけたんだ。収穫アリだろう?」
「待て、トオル、その猫は!」
猫をサタンの顔に近づけるトオルは「にゃにー?」と猫語(?)で猫の後ろから顔をぴょっこり出す。サタンは顔を一瞬赤くして振り払うように顔を横に振ると子猫を受け取り、子猫は気ままに、にゃーと鳴けば彼の肩に乗る。
「こいつは俺の知り合いの魔女の使い魔だ。魔力もある」
「へー、ってことはサタンくんのカノジョ?」
「おいおい、だからなんでそうなるんだ」
 2人のいつものじゃれあいが始まれば、子猫もサタンの肩でヒト伸び、にゃお〜んと鳴けば、ぞわりと魔力が伝って、人間であるトオルの耳にはビリビリ痺れる。
「あ――」
 サタンが口を開くのも束の間、トオルにはぴょっこり、子猫と同じ猫耳と尻尾が生えていた。それはこの子猫からの恩返しなのか、なんなのか、トオルはサタンの目線から頭に生えた猫耳を、ポフポフ触って確認すれば「えー?!」と声が路地裏に響く。逆にサタンは嬉しそうに微笑んでいる。
「⋯⋯トオル」
「⋯⋯にゃに、サタンくん」
「帰ったら触らせてくれ」
トオルはくるっとUターンすればサタンの方を向いてイタズラっぽく舌を出し、あっかんべーをする。
「浮気モノには触らせてあげにゃーい」


それは猫からの恩返しか、戻るには一日掛だっ
たが、猫を無事に魔女の元に帰すと、その時点で
トオルはがっしりサタンにホールドという名の手
繋ぎをされており、そのまま手を引かれるまま、
館に帰ってはサタンの部屋でトオルはモフられた。


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