永遠の箱庭


ディルック様に様に義娘としか思われてません!!!!!




※お酒は20歳になってから

 ディルック様に拾われ、この風の国に来て早4年。私は出会ってからディルック様に恋焦がれているのに、彼は私を義娘としてしか見てくれない。こんなにも可愛くて、こんなにも愛らしいコウモリの血を引くあたしが、あたしが…

「どうして義娘としか思われてないのよーー!!」
 普段、キッチンとしてバーテンに立つのとは変わってエンジェルズシェアに客としてカウンター席に座ってるあたしに一気に他の客からの視線が集まる。一席離れたところに座っていた眼帯の騎兵隊長は、ははは!と面白がって声を上げて笑っているのが気に食わなくて睨んだけど効き目はなく、あたしは何にも言えずにぐぬぬと歯を食いしばる。
 仮にもあいつはディルック様の"義弟"だ。なぜこんな男のことを義弟として"半分"信用しているのか意味がわからないけど、あたしよりディルック様のことを知ってるし、傍にいたい期間が長いからあたしは奴より格下、その証拠にディルック様は私を立派な"女性"として見てくれない! 
「もーーなんでなのよーーー!!」
 だんだん悔しくなってきて目の前が涙で溢れてきた。思わず吃逆も飛び出て既に舌ったらずな声でチャールズに蒲公英酒をグラスで頼む。いつもは未成年だからだめだと言うのに、今日に限っては黙って出してくれた。全く、気が利くじゃない。
「旦那は充分、ネメシアのことを大事に思ってると思うぜ?」
「うるしゃい!あんたにいわれてもうれしくないわ!!」
 ごくり、と一杯呑めばそれだけで世界がふにゃりと湾曲して心地が良い。また一口含めば、隣の騎兵隊長は「おいおい」と私の様子を伺って焦り始めた。
「あたしは、ディルック様に拾われてからディルック様のそばにいるのよ?ずっとおそばにいるってきめたの!義弟のあんたよりあたしの方が好きなの、大好きなの!!」
「お前さんが旦那のこと好きなのは見ればわかるだろ」
「…でもディルック様は、あたしにここ以外の夜のお仕事に着いてくるな!って言うのよ?!あたしはもう充分強いのに!あたしはもう一人でも戦えるのに!守ってばかりじゃなくて、あたしもディルック様を守りたいのに」
「それは「あたしのこと、義娘みたいにしか思ってないんだわ」…は?」
 湾曲した視界の中、奴の顔がよくわからないけど豆鉄砲を喰らったように息を吐いた。話してるのは私で、勝手に頭の中でお話を作っているのかなんだがイライラしてきちゃう。

 グラスから蒲公英酒がなくなる頃には、意識は朦朧としていて視界は霞んでいた。相変わらず騎兵隊長はまだ呑んでるみたいだけど、私はやっとの思いで飲み終えた一杯で机に伏した。
「あたしがなりたいのは義娘じゃなくてディルック様のおよめさんなのに…」
 ずっとずっと、私に背を向けて守ってくれた赤色に恋をしていた。あの人がいなければ、私は今きっとここにはいないし、今頃ドラゴンスパインで凍っていた。
 最初はこんなにも優しい人だとは思ってなかったし、いつ取って食われるか、心配だった。けどそんな事は全然なく、三年テイワット大陸を旅して四年目にワイナリーに連れてこられ、私にいろいろなことを教えてくれた。ファデュイからだって守ってくれた。私が悪夢に泣き叫ぶ夜は添い寝してくれた。風邪を引いた日は一日中看病してくれた。ここまで暖かく迎え入れて一緒にいてくれたら、嫌いにはなれないし、好きとしか言えない。
「…ネメシア」
「んー…ん?…んへへ、ディルック様がみえるや…」
 視界はもはや湾曲どころか霞んでいて赤い影だけが気づいたら私の目の前に見えて、私は首を傾げる。
 今日はエンジェルズシェアにくる日じゃなかったはずなのに、なんでここにいるんだろう?あたしの目の前にいた人がディルック様で、あたしの帰りが遅いのを心配してわざわざ迎えにきてくれたのかな? そうだと良いなぁと考えながら私の意識はふわふわと消えていった。



「はは、面白いもんが見れたな。あれ義娘以上に思ってるだろうなぁ」
 エンジェルズシェアは騎兵隊長の笑い声だけが静かに響き、そこにはネメシアとディルックの姿は無く、コウモリの獣人を姫抱きし、眠る彼女の顔を見て微笑むディルックが城内を歩いてる姿が目撃された。

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