ゼアノートのポータルに存在する白く、山のように連なる街、スカラアドカエルムでカイリの心のかけらの残りを集めるため、未来から来たソラは自身がこの場所に来るまでの間、探索をしていた。
誰もいないはずのこの世界に(いるとしたらマスターゼアノーとだが)、見たことがある人影が目の前を横切る。
それはコールによく似た少女だった。少女は髪と瞳こそコールと同じだが、髪型と服装がソラの知るコールとは異なっていた。
少女は一瞬ソラの方を見て、くすり、と笑うと街角を曲がりソラの視界から消える。少女の笑みもコールとは違う大人っぽい雰囲気を感じさせる。
「待って!」
ソラは少女のことが気になり、急いで彼女を追いかける。少女はソラを弄ぶようにくすくすと子供のように笑って走っていくが、なかなか追いつけず、追いついたのは少女が立ち止まってからだった。ソラと少女のいる場所は、墓地であり、四つの墓に花が備えられている。
「キミは誰?なんでこんなところに…」

ソラが声をかけると、少女がゆっくり振り返る。少女は墓に添えられた花とは違う花を持っていた。ソラはなんとなく、この花は彼女が添えたものだと察した。
少女はよく見れば見るほど、コールに似ている。細かい仕草や動作こそコールとは違うが、彼女の表情は時折コールの見せる慈愛の満ちた表情と重なる。
少女はソラの問いに答えることはなく、その手からキーブレードを出現させる。キーブレードは、今までソラが見てきたものとは違い、アクア救出の際、闇の世界のディスティニーアイランドの扉を開く時に使ったマスターキーパーの形に似ており、色合いは古のキーブレード使いたちの使っていたスターライトに似ている。
少女がキーブレードを構えると、ソラも戦闘体制に入る。少女の抱えた花が、床に落ち、小さな音を立てて散ったところで、二人のキーブレードが交わる。
「キミは…なんで…」
「……」
相変わらず、少女が口を開くことはなく、無言でソラに切り掛かってくる。武術の腕は、我流であるソラよりも劣るものだが、少女の魔法は格別に強かった。高度な魔法を息切れ一つせず放っていく姿は、今までソラとドナルド、グーフィーの手合わせしていたコールとさらに重なる。
「燃え尽くして!」
「くっ…!」
押され気味なソラは、奥歯を噛み締めて、少女のファイアガンをキーブレードで受け止める。受け止めたところですぐに少女が崩そうと切り掛かってくるので、ソラは太刀打ち出来ずにいた。
こんな時、コールは手合わせの時になんと言っていたか、ソラは頭の片隅で忘れそうになっていた記憶を呼び起こす。
『魔法使いや魔導士、魔法を主に使う人たちは大きな魔法を使えばそれなりの魔力を消費するの、だからすごい魔法使いでもキャパは絶対ある!だから強い魔法使いにあったらとりあえず耐えて、耐えて、絶対に隙がある。そこを狙うのがいちばんの近道!』
ソラの記憶の中のコールがえへ、っとウィンクをすれば、ガードするためにキーブレードを支える手に力を入れる。
まだソラはカイリの心のかけらを集めてすらいないのに、ここで負けてはいられない。
ソラが数十秒、体制を整えながら魔法を受止め、リフレクを貼ると、一瞬、少女の動きが止まり、ゲームのバグのようにその姿が崩れ、その1部がコールのものと重なる。厳密にはこの少女も、重なった姿もコールでは無いのかもしれない。
ソラはその隙を狙ってキーブレードを振り上げるともとの少女の姿に戻り少女がその場で崩れ落ちる。少女はソラを見上げると微笑み、先ほどとは違い、その顔はコールと同じもので、ソラは驚きと困惑で「えっ」と声を出して一歩後ろに下がる。
『そう、貴方が……』
「キミは一体……」
結局、少女がソラの問いに答えることはなく、光となって消えていく。代わりに少女の落とした黄色のカサブランカだけが残された。ソラは息を呑むと、カエリの心のカケラを探すため、黄色のカサブランカを一輪そのまま残して、先に進む。横目で花が添えられた墓を見ていくと、その並びに花が添えられていない墓があり、そこには『Call』と見覚えのある名前を見つけて目を見開いたが、きっと見間違いだろうと、ソラは墓地を後にした。