いたいのいたいのとんでいけ〜

 ドアを叩く音で、コールは本を捲る手を止める。乱暴にドアを叩く音は、もう彼女には慣れっこで、なんなら椅子が倒れるくらい勢いよく立ち上がって小走りで扉に向かってはすぐにドアノブに手をかけて警戒心泣く扉を開く。
「ヴァニちゃん! おかえりなさい! って、え?!」
 コールは扉を叩いた本人、ヴァニタスの顔を見るやいなや、動揺を隠せなかった。彼の顔はいつもよく青白く、体調が良くなさそうだ。
 そう彼女が思ったのも束の間、ヴァニタスの身体はよろけ、コールにもたれ掛かるようにして体を預ける。コールは彼の意識を確認すべく、何度か名前を呼んだが、反応はない。そのことに彼女の顔からも血の気が引いて、急いでヴァニタスの身体を家の中に入れようと自分の体重より重い男の体を引きずってはなるべく揺らさないようにそーっと自身のベッドまで運ぶ。
 ベットに運び、ヴァニタスがきちんと息をしていることを確認すると、コールは「よかった」と胸を撫で下ろす。
 コールはヴァニタスに対して、特別な思いを抱いている。それは恋に近いが、友情とは違う、不思議な感情。コールは愛しいとすら彼を思っている。それが純粋な闇であっても。
 ふと、コールは、ヴァニタスの頬を撫でて、額と額を重ねる。その姿は聖女が慰めを与えているようで美しい。
「いたいいたいの飛んでいけ〜!」
 額を離せば、言動とは裏腹の柔らかな笑みを浮かべて、ベットを後にした。


(…どのタイミングで起きればいいんだ?)
(ヴァニちゃんに栄養のあるご飯でも作ってあげなきゃ!)

 


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