永遠の箱庭


Prologue


「この世界はね、ニセモノなの」

 幼い頃出会った不思議な子はそう言ってブランコに座っている足で地面を蹴り、少しばかり揺らして遊んでいる。

「だから、いつかは覚めないといけないの」

 少女のエメラルドの目は、街灯と月の光で怪しく光っていて、艶めかしい。薄着の彼女からほんのり風に乗って香る汗の匂いが今が夏だと言うことを思い出させる。
 俺は彼女の座るブランコの隣に座れば空を見上げる。まばゆいばかりの星が煌めいて、なんだか"気持ち悪い"と感じて、唾を飲み込んだが、代わりに喉がぐるぐると鳴る。それに気づいた彼女が俺の方に顔を向けて、ふふ、と"やっと子供らしく"笑う。

「ヒトはそれぞれ、見るものも思うことも違う。ヴァニちゃんには、この世界はどう見える?」
「…それは──」

 気持ち悪い。そう言おうとしたところでジリジリリという耳を突き破りそうなほど大きな目覚まし時計の音が鳴り響き、何も言わずに布団から顔を覗かせて目覚ましを止める。

「夢か」

 起きたくない体を起こして、カーテンを開ける。眩しくて熱い太陽の光が目に刺さって思わず目が霞む。
 俺はまだ起きていない目を擦りながら、真新しい制服に着替えれば部屋を後にしてリビングへと向かった。

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