4話

 1.
 あれから毎日のようにペスリは修行に明け暮れた。朝は副社長で師匠の弟でもある木馬と勉学を、昼間はKCの仕事の手伝いを、そして夜には仕事が終わる頃にデュエルの修行に入り、毎日が有意義に、早く時が過ぎる


そして今日という今日、ペスリはデュエルアカデミアに受験するため、解放され.......るのだ


他のデュエルアカデミア受験者は1週間後に試験があるらしいがペスリは特待生という位置につくことが出来、そのために師匠と自分のデュエルの映像を事前に送り、今日、デュエルアカデミアの校長と面接をするのだ。
 KCの所有地でもある海馬ランドの小さな小部屋で、それは行われていた。小さな部屋に二人っきりは、まるで部屋の方が大きいのか声は反響して止まない。
「君がペスリ・アークライトくんですね」
「はい…ペスリ・アークライトです。」
 優しげな40代ぐらいの男性.......もとい、鮫島にペスリは余裕そうに目を細めて微笑む
「それでは早速いくつか質問失礼しますよ。」
『はい。よろしくお願い致します。』
 微動だにせず、ペスリは内心緊張しながら外側にはその緊張が分からぬよう、質問に答えていく。
「それじゃあ最後の質問です。ペスリくんはどうしてこの次元に来られたのですか?」
「私は追いつきたいんです。大切な人に.......そのためにここに来ました。あそこでは身につかない力をここで身につけて、あっと驚かせてみたいんです。もう守られるだけの私じゃないんだって。」
 にっと微笑むペスリはここ1番の笑顔で鮫島を見る。
 質問を終え、ペスリの決意を聞いた鮫島は君なら大丈夫でしょう。と優しく微笑み返し、面接は終了した。

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午後14時頃、日差しがすこし弱くなる頃、海馬ランドの前には1台の高級車がとまっており、見慣れたそれにペスリは乗り込むと安心したように一息ため息をつく。

「ヘマはして無いだろうな?」

「ん〜、それは校長先生の受け方次第かな?」

広々とした車内の中、ペスリは「私はもう疲れたよ.......」と小さくつぶやくと目をつぶり眠りにつく。運転していた師匠こと海馬瀬人は車内の鏡でそれを見るとふと微笑み、会社につくと抱き抱えて部屋まで連れて行った。


2.
 めくるめく日にちは過ぎていき、ペスリが面談した人は打って変わって一般受験の日、このままKCにいて海馬のお手伝いするのも嫌だと思った彼女は本来の子供らしさをめいいっぱい全身にだし、「私も一般受験会場に行くんだ〜〜〜〜〜〜!」と駄々をこねれば「つまみ出せ」とイラついた彼の言葉に付き人の磯野は社長室からつまみ出せば、車を出して海馬ランド特設デュエル場に向かった。
 それなりのスピードで走る車の窓からペスリは「おねだりが成功して良かった」微笑む。磯野はそれを横目で見て微かに微笑む。

 特設デュエル場は、中等部から上がってきた生徒も見物に来ており、青い制服を見に纏ってる。
 オベリスクブルー。オベリスクの巨神兵。デュエルアカデミアではトップクラスというもので中等部からの生徒と女子生徒が必ず入るとされている。
 オベリスクブルーがトップなのはきっと師匠の趣味だろうと、ペスリはオベリスクブルーの青い制服を見て口の端をあげた。
 だが、どの人を見ても、面白さはなくて、自身の師匠や遊戯さんより楽しませてくれる人はやはり見当たらない。「やっぱりそうか。」と肩を落とせば、会場内のアリーナ席に座る。
 その席は見渡しが良くて、実技試験を受けている子たちのことをよく見ることができる。
 ふと、視界の端では自分と同じように実技試験を見つめる影が四つ。
 ペスリが思うに、四人の内三人は取り巻き、真ん中にいるプライドの高そうな子がリーダーだ。どこか小柄に見える体格や、その容姿からきっと実技試験を受けている子たちと同年代。中学からの成り上がり、オベリスクブルーだ。
「そういえば知っているか?今回の入学試験。特待生の0番がいるらしい。」
「そうなんですか?万丈目さん!!」
「あぁ、兄からの情報だ。間違いはない。」
(うわー…どっからどう考えても私のことじゃん。)
 ペスリは横目で見るや否や一度ため息をついて外の空気を吸おうと、咳を立ち上がりその場を後にした。
 密室空間は、息苦しい。というように、外に出た瞬間、ペスリは大きく深呼吸した。
「受験番号、110 遊城 十代、 セーフだよね?」
 いきなり横の受付側の花壇からガサッと音がすると思えば、にっこりピースセインをした男の子が顔を出している。ペスリはそれを見るや否や目を丸くしたし、受付にいたKCの社員は顔を見合わせている。
 それはそうだ、彼は時間ギリギリなのだから。
 ペスリは改めて彼の顔をじっと見ると、他の人とは少し違う気がして、顔を見合わせている受付と男の子に歩み寄る。
「私が校長先生に話しましょう。貴方は試験監督の代表の先生に連絡を」
「ペスリ様…?!わ、分かりました!!」
 もう数年KCに入りたびり、海馬にこき使われ、修行もしてもらっているペスリは運がいいことに、KCの社員は顔見知りであった。そのため、顔が聞き、直ぐに社員は電話に取り掛かる。
「ここは私に任せて、貴方は早く会場へ」
「え…あぁ!それよりお前の名前は?」
 その場で駆け足をしながら、男の子は早口で言う。
「ペスリ・アークライト。貴方がデュエルアカデミアに合格すれば、また会えるはずだよ。」
「俺は遊城 十代!よろしくな、ペスリ!!」
『ほら、早く行きなさい』
 ペスリは男の子、十代の背中を押して急かすと、彼は「やっべー!」と足を巻いて会場に入って行った。
 ペスリがやれやれ、っと肩を竦めると、隣で連絡を取っている、社員の顔には、戸惑いの表情がちらっと見え、やる気を注入するように両手で両頬をパンっと叩く。
「一仕事…しますか!!!」
 ペスリは手荷物の中から海馬から持たされている携帯端末を手に持ち、連絡帳から鮫島と書かれた文字に慣れた手つきで電話をかけると、三コール目で鮫島は電話に出て、手短に用件を話す。

 ペスリが電話を終えた時、ふと十代のことで疑問に思うことが一つあった。
「…変な声が聞こえた気がするのは、きのせい?」
 十代が会場に入って行こうとした時に聞こえた謎の声の正体を掴めぬまま、ペスリは会場に戻った。

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 会場に戻る頃には、十代のデュエルは始まっていた。彼の相手はデュエルアカデミアの教授、クロノス・メディチ。 古代の機械アンティークギアデッキの使い手と知られている。
 ペスリは手荷物からノートパソコンを出せば膝にのっけてクロノスのデータを検索をして同時にノート機能を開けばそこにレポートのようなものを書き始める。
 (クロノス教授のデッキは見れば分かる通り試験用のデッキじゃない…なぜクロノス教授は自分のデッキを?まさか、十代…教授を怒らせた…?私が折角試験受けさせてあげたのに?)
 ううーん。と頭を悩ませる私の同じ列に座っていた四人組は「レアカードが見れる!」と騒いでいたが、そんなことも頭に入ってくる事はなく、頭を抱える。
 ふと顔を上げて十代の方を見る。十代のデッキには勇ましいヒーローモンスターがいる。
 レポートを書き込む手を止めて十代をじっと見つめていると、いつの間にかフィールド魔法、摩天楼-スカイスクレイパー-が展開されていた
「綺麗・・・!」
 十代はそのままあのクロノス教授に攻撃をしてデュエルに勝った。
 その姿にペスリは息を飲む。それと同時に四人組も息を飲み唖然としていたが、それはきっと会場にいる全員が驚いているだろう
「遊城.......十代、面白い子。」
 ペスリはそう独り言を零すと、書きかけのレポートを後にするようにノートPCを閉じれば会場を後にした。

 レポートに苦しむのは海馬コーポレーションに帰った後のお話。

 


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