3話
「ねぇ、君たちは今巷で人気のこの動画、しってるか〜い?」
やけの声の低い熊はタブレットに流れる動画を三人の男に見せる。金髪の男はその映像を舐めるように見、黒髪の男はギラギラとアメジスト色の瞳を輝かせ、灰色の髪をした男は不思議そうに見つめる。
「この動画ってちょー急上昇の”天使様”じゃん!!」
さっきの様子とは打って変わり、鼻息を荒くして興奮し、タブレットの画面にかじりつく。
さすが朔空くん、と熊は感心したようにつぶやく、そんな様子を見て黒髪の男は溜息をつき、口を開く
「おい、俺たちをここに呼び出してなんのつもりだ」
その声は氷のように冷たく、尖っていた、こわいよーと言う熊をさらに睨み、追い打ちをかけると熊はおずおずと話し始めた
「実はキミたちの新メンバーとして、この子をスカウトとしてもらいたいんだ」
はぁっ?と魔の抜けた声とともに部屋の中の時計は時を止めたように固まって動かなくなった。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+
先程まで三人の男が居たエトワール・ヴィオ・スクールの最寄り駅から3駅ほど離れたところに、”天使様”と呼ばれている少女が歌っていた公園はあった、丁度少女が歌っているのか、公園は割とたくさんの人が集まっていた。すれ違った2人組は、「天使様まだかなー?」「もうそろそろ時間じゃない?」とどうやら数回この公園に来ている様子で、そわそわと浮き足立っていた。そんな中だ、噴水の前に一人の少女が現れると空気が変わる。すみれ色の背中が隠れるぐらいの髪の毛を揺らし、ルビーのように真っ赤な瞳を輝かせた少女.......そう、あの動画の少女であった。少女の声はまさに噂に聞く天使のようで、透き通り、今にもどこかえ羽ばたいてしまいそうな歌声であった。
数曲歌い終わって拍手と歓声が公園からは溢れた。少女は「ありがとう、ありがとう。」とそれぞれの方向にワンピースの裾をつまんでお辞儀をしていた。拍手と歓声がおさまった数分後、金髪の男.......朔空は今にも爆発しそうな程の興奮をなるべく抑えつつ彼女に後ろから近づく。そして、彼女の肩に触れて「ねぇ」と声をかける。
「????はい?」
彼女は振り向き、首を傾げる。その顔の周辺には、はてなが沢山浮かんだようにきょとんとしてる。そんな彼女を見て、興奮が抑えらず思わず肩を両手で力いっぱい掴む、彼女の肩は弱々しく今にも折れてしまいそうだと思う矢先に彼女が驚いたのか、「ひぃっ」と小さく声を漏らした。
「あ、ごめん。つい興奮しちゃって。」
『いいえ、熱心なふぁんの方は最近珍しくはないから.......』
これはいけないと思った朔空は肩から手を離してにこっと微笑む。黒髪の男.......黒羽から”怖がらせないように”と注意をさればかりなのを思い出し、彼女の顔色を伺うが、顔を見つめすぎたのが、さらに頭の上にはてなが浮かぶばかりで余り怖がる素振りはなかった。
「キミ、アイドルとか興味ない?」
唐突すぎる言葉だったが、彼女はその言葉に朔空と目が合う、その目は歌っている時と同じぐらい輝いて見えた。少女は「それ、どういうことですか?」と小さく呟く
「あれ?これ以上言わないと分からない?意外とキミって天然なんだね。実はさ、キミをスカウトしたいって人がいるんだ。」
まぁ、実際人かどうかは分かんないんだけどっと朔空は心の中で思ったが、混乱を招かないために口には出さないでいた。彼女は驚いたのか、嬉しいのか、え?え?と周りをキョロキョロ見回してあたふたとしている。そんな様子を見て写真を撮りたくうずうずしつつ、どう?と彼女に問いかける。
『あの、明日出直して頂けませんか?今日はもう日も暮れちゃったし.......気持ちは嬉しいんですけど、いきなりスカウトだなんて言われても.......』
彼女は顔を赤くしたまま俯いた。その言葉を聞いて、朔空は「まぁ、そうだよね。」っと呟き、明日の朝11時ぐらいに此処で待ってるね、と約束をして、その場を後にした。