魅惑のイミテーション

「なんだこれは…ふざけるな!!!」

センゴクは思いきり力を込めて机を叩き、目の前の女海兵を睨みつけた。仏と呼ばれるその男の顔は、今は閻魔のように赤く、怒りに染まっている。白く艶のある塗装がされた木製のそれは、バキバキと音を立てて真っ二つに割れた。
リシェが報告に行く度、海軍本部元帥室は必ず備品が粉々になる。今回は机が犠牲となった。またですかぁ、と年若い事務員の泣き顔が頭に浮かぶも、その後のリシェの言葉によってすぐに消え去った。

「ミックスマン海賊団、船長“機械仕掛けの雑種(ミックス)”ことマンフォールド。懸賞金8000万ベリーです。」

「そんなことを聞いているのではない……リシェ!!この海賊は生け捕りの命令が出ていたはずだ!!しかもミックスマン海賊団は最近所属したとはいえ、白ひげの傘下だ……お前、この意味を分かっているのか!!」

「……十分承知しております。ですが白ひげと懇意にしているからといって海賊は海賊。少しでも数を減らすことは、今後の海賊殲滅作戦に向け重要だと考えました。」

何か問題でも?とキッパリと、そしてそれを正しいと信じて疑わずに言い切ったリシェに呆れ果てたセンゴクは項垂れることしかできなかった。
もういい!下がれとリシェを追い出し、センゴクは机とともに破かれた報告書に目を落とす。事細かに記された状況とともに添付された数枚の写真は、マンフォールドとその仲間達が殺された姿を嫌になるほど鮮明に写していた。
──油断も慈悲のじの字もないこのやり方はやはり、大将赤犬を彷彿とさせる。

幾らリシェに力があるとはいえ、中将の位を与えるには彼女はまだ若く、世間知らずで考えが甘すぎる。だが降格も解雇も海軍元帥センゴクの権限でどうにかできることではなかった。何故なら彼女の中将昇格は政府上層部からの指示であったからだ。その理由も知らされることはなかった。この決定に対し、年端もいかぬ子供に中将の任を背負わせるのは危険すぎる、と海軍内部からは声が上がっている。しかし彼女は中将になるまでは、海軍士官学校を首席で卒業し、優れた身体能力と頭脳を買われていたのだ。その成績は歴代首席卒業者の中でもトップレベルだったと聞く。
しかし、上層部が彼女の力を認め、わざわざ位を与えたとは考えにくい。上層部が動くなど、何か特別な理由があるに違いない。謎に包まれた少女のことを考えると、センゴクの胃痛は止まらなくなった。
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