「ここが今日からキミのホームです、ようこそチーム春名へ」
わーパチパチとひとり歓迎をしてくれる朝日さん。
通されたのはフロア最奥のガラスパーテーションで仕切られた部屋で、天井からは「チーム春名」と油性マジックで書かれたボードが吊るされている。その隣にどピンクのアルミ風船がフヨッと浮いているが、それ以外はぱっと見なんとも素っ気ない室内で、積まれた書類やらダンボールやらが大量にあるくらいの綺麗な部屋だ。やはりチームに女の人がいるとこぎれいにされてるんだなと安心する。
「キミのデスクここね」
指定された席に荷物を置く。
パソコンやらは明日までに届くらしい。
ここが自分の席かと感慨深く感じつつ、どうしても視界にちらつくピンクの風船を改めて見つめると、「チームおはる」となんともゆるい文字が書かれていた。朝日さんの趣味かな。
「あの、チームの人って他には…?」
激務と聞くから新人一人にかまけてられないのだろうと思いつつ遠慮気味に朝日さんに尋ねる。
こっち、と端的な返事に後をついて行くと、書類の山の奥に男の人がいた。
…ピクリともしないけれど人間、だよな。
「お、おつかれさまで…」
意を決して発した挨拶は途中でかき消された。
ドン!!!朝日さんがデスクに置いた差し入れの音で。その衝撃にパラパラと書類が数枚崩れる。
「おっちゃん!!新人さん!!」
おっちゃん。そう呼ばれたその人は朝日さんに両肩を掴まれガンガンゆすられている。
意外とパワープレイな朝日さんの一面に、ついヒュッと息を飲んでしまった。
ああ、この人首大丈夫だろうか。
「…あ、あーそうだった、そうだったね…」
「あとこれ差し入れ、挨拶がてら休憩にしよ」
「うわー…ありがとうルイちゃんが差し入れなんて…ああ、ごめんねどうも静岡です、よろしく」
「は!鈴木太郎です、よろしくお願いします!」
「タローくんね、うん元気でいいね」
はははと脱力感たっぷりに笑った静岡さんはいかにもお疲れと言った顔。幸薄そうというかなんというか、気の優しそうな人だ。
「愛称は おっちゃん だから、尊敬と敬愛をこめておっちゃんと呼んでね」
「ははは、るいちゃんが言うのかい、それ」
何とも仲が良さそうだ。
激務だろうが何だろうが、この人たちとならやっていける気がする。
「たまにはお茶でも飲んでリフレッシュしないとねえ、いやーありがたいです」
人手が増えて助かりますねーとか言いながら、ヘロヘロな静岡さん改めおっちゃんが差し入れのプルタブを捻るとプシュっという小気味好い音が響いた。
コーヒーじゃ無かったのか。何ともなしに伺うと、ウワアアとおっちゃんが呻く。なんだなんだ。大丈夫か。
「…そうですね…るいちゃんが休憩どうぞなんて優しすぎると思ったんだよ…お茶なんて一言も言ってなかったね…」
「失礼だなあ」
「…寝てないでさっさとやれって事ですねわかります…」
「解釈はお任せします」
ニコリと笑う朝日さん。
ついさっきまで女神と疑わなかったその輝く笑顔に一瞬修羅が見えた気がした。
項垂れるおっちゃんの手には「絶対覚醒」と書かれた強烈なエナジードリンクが握られていた。