カラ松のウインクとは


「ねえねえ、カラ松ってウインクできる?」

松野家に訪れた#name#は、一人鏡を見ては物思いに耽る次男に素朴な疑問を呈しました。その手には三男の私物である『橋本にゃー写真集』が収まっており、見開きページでポーズを決めたにゃ〜ちゃんが悩殺ウインクをかましております。鏡から視線を外し、ニヒルに微笑んだカラ松は#name#を見つめます。

「フッ・・・何を言い出すかと思えばそんな事か。俺への愛を囁いてくれても構わないんだぜ・・・」
「キャーカラ松かっこいいー、ウインクしてー」
「仕方ないな。愛を知らない天使への慈悲だ」

#name#はカラ松のこういった言い回しに対し痛いだのウザいだの言う事はなく、ただ「自分で何言ってるのか分かってるのかな」とぼんやり思うだけでした。さて、ウインクをせがまれたカラ松はというと、それとは全く関係がないのにゴホンと咳払いを1回。もったいぶっております。嫌な顔一つせずわくわくと待つ#name#。ぱちん。効果音をつけるならそれが一番適当でしょう。カラ松は両目を閉じて、開く。いわゆる瞬きをしました。
そこで#name#はスマホを取り出し、慣れた手つきで『ウインク 意味』とググります。検索結果に少々の誤差はあるものの、必ず共通しているのは片目の瞬きという点でした。何度思い出してもカラ松は両目の瞬きしかしていません。ちなみに今は、スマホで写真を撮られるものだと思い、いやに髪型を気にしております。

「・・・あのう、カラ松さん。私はウインクをお願いしたんですけど」
「?しただろう、ウインク。ほら」

だめ押しの2度目も、それはもうしっかりと両目を閉じておりました。もしかしたらカラ松はこれがウインクだと思っている、もしくはただ上手に出来ないだけ、と#name#は思考を巡らせます。前者が先に思い浮かぶあたり相当です。釈然としない反応や、未だに聞こえないシャッター音もなんにその、カラ松は頬を赤らめます。

「俺のウインクでイチコロだろう」
「うーん。まあ、そういう事でいいや」
「#name#にしかやらないからな」
「あ、それは嬉しいかも」

事実は分からないにしろ、結局のところ、カラ松であるならば#name#は何だってよかったのでした。この相手が仮におそ松であったとしたら彼は骨の髄まで馬鹿にされた事でしょう。2人の間では愛が全て、全てが愛なのです。


愛って言えばいいってもんじゃないって思った。

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