カラ松の下心


「マイハニー、新しい靴をおろしたんだな」

カラ松はいつも名前で呼ぶくせに、突然"マイハニー"と呼んでくる事がある。いつまで経っても慣れなくて一瞬止まってしまう。思考回路が追いつかない代わりにカラ松の視線を追うと私の足元に伸びていた。ああ、靴!

「そ、そうなの。一目惚れして買っちゃって」
「一目惚れか・・・。フッ、#name#の審美眼はさすがだな。似合ってるぜ」
「ありがと」

青地に黒いリボンがあしらわれたパンプスは、今日おろしたばかりながら本当にお気に入りだ。この青さがカラ松がいつも着てる色だなって惹かれて、だめ押しで黒いリボンがサングラスとまで思えてきて買ったんだ。カラ松信者かよ。

「カラ松は細かいところまでよく気が付くね」

前髪を切ったりメイクを変えてみたりした時も、気分の変化にだって真っ先に気が付いてくれるのはカラ松だった。その中でも靴の変化にはとりわけ早く気付いてくれる。一緒にいる時間が長いのもあるけどやっぱり嬉しい。嬉しさついでに靴から顔を上げてカラ松を見ると冷や汗をたっぷりかいている。え?禁句だったとか?

「そ、そうだな・・・よく気付く・・・あーっ・・・」
「なにか悪い事言っちゃった?」
「いや、#name#は悪くないんだ!嘘をつきたくないから正直に言うぞ」
「う、うん」
「・・・常日頃、踏まれたいと思っていたんだ」

マイハニーと呼ばれてないのに一瞬止まってしまった。踏まれたい。誰が、誰に?カラ松が、私に。靴の違いによく気付くのはそういう事だったのか!脚をよく見ているのは脚フェチだからじゃなくてそういう事だったのか!今すごく納得して晴れやかな気分だ。あたふたしてカラ松は気付いてないみたい。

「すまん、気持ち悪くて・・・」
「そんな事ないよ。カラ松信者として性癖がどうとか気にしないから」
「(信者・・・?)」
「むしろ言ってくれて嬉しいよ」
「#name#!女神か、お前は!」

さっきまでのあたふたを全然感じさせない動きで手を取り、ぶんぶん振るカラ松。握り返すともっと嬉しそうにする。ううっ、笑顔が眩しい。結構大きめなカミングアウトもけろっと忘れてしまいそうだ。色々と落ち着こうとしていたら、それが通じたのかぴたりと動きを止める。なにがいるわけでもないのに辺りをキョロキョロして耳元に顔を寄せる。

「それで、だな。是非とも#name#に踏んでほしいのだが・・・」

言われるであろう事に想像はついてたしドンピシャだ。カラ松の声は芯が強い。こっそり囁かれるとその特徴は掻き消されるどころか余計に強調されて、耳はくすぐったいわ私までもじもじする始末だ。

「でっ、でも、いくらおろしたばっかって言っても」
「ああ、分かっている。汚れる事を心配しているんだろう?#name#は優しいな」
「カラ松・・・」
「帰ってから裸足で踏んでくれてもいいんだ。なあ・・・」

カラ松は押しに弱くて、気もちょっと弱いところがある。おでん屋弟子入り事件とか、一松と一悶着あった時とかも、話を聞く限りそれらが原因だったはず。でも目の前のカラ松はどうだろう?饒舌で、目が爛々として、引く気は全然なさそう。もしかしなくても吹っ切れてる。

「頼むよ、マイハニー・・・」

あっ、今、それはずるい!

下心が出ちゃうとマイハニーって呼んでくる系カラ松でした

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