地面に赤い花を咲かせた君は、世界で一番美しかった
赤は嫌いだ。
血の色
仲間の死体を燃やす炎の色
兎に角赤はロクなモンじゃない。
今までの壁外調査で多くの仲間を失った。今生き延びている奴らは、それを見てきた。
「…不気味だな」
辺り一面には、真っ赤な花が咲き乱れていた。
仲間の骨や街の人が埋められている所に。
『彼岸花ですね』
そう隣を歩く名前が言った。
そもそもここへは名前が行きたいと言って来たのだ。なんでも1番仲の良かった親友がここで眠ってから1年が経つらしい。
「彼岸花というのか…」
『あれ、知らなかったんですか?食料難に昔遭った時、昔これ食べてたんです。毒持ちなんですが、洗えば毒は消えるので』
「そうなのか…にしても不気味だ。赤は死を連想してならねぇ」
俺はしげしげとその彼岸花という花を見る。花弁は血の様に真っ赤だった。まるでこの下にいる仲間の血を吸い取ってでもいるかの様に。
名前が居なければこんな花等、ここまで見ることも無かったのだろう。
いや、むしろ花等気にも止めなかったかも知れない。
……こいつと居て、俺は随分と変わった。
そんな事を頭の隅で思う。
『花弁、相変わらず綺麗ですね』
どうやら名前のこの花に対する想いは俺とは違う様だ。
『この花、花を咲かせる必要は無いんです』
「……どういうことだ?」
『花は実を結ぶ為に咲くんですけど、これは実を結ぶことが無いので花を咲かせる事も無駄なんです』
なら何故咲いている。
そう問うと、名前はそれは分からないと言った。
「この花が好きなのか?」
『…そうですね。身近でしたし、優しい花ですから』
「毒を持っているのに、か?」
俺は意地悪く口を歪ませた。
『毒持ちだからですよ。毒のおかげで皆を守ってるんです、虫や動物から』
そういうと柔らかく名前は笑った。
ここで言う皆とは、この下にいる奴らの事だろう。
『私もこの花のように綺麗で、大切な人を護れるように成りたいです』
********
──────あぁ、何故今こんな時にあの日の事を思い出す。
それではまるで………
「……っ、オイッッ!!名前!!」
名前の班が壊滅寸前という報告を受け、俺は急いで駆けつけたが、そこは死体だらけ。
巨人から取り返した名前も半分程食われ、虫の息だった。
『へ、へい……ちょ、………うれしいっ』
嬉しいはずがねぇだろ。
俺は力強く、名前の体を抱きしめる。
名前の生暖かい血が、どろりと俺の方にも流れてくる。
こいつがいなくなることに、俺は今迄にない位恐怖した。
『わ、わたっ、 護れましたか…?へいちょっ、……役、たてました、か?』
「…………充分だ。充分過ぎる」
そう言ってやれば、名前は嬉しそうに笑って、絶命した。
だから嫌なんだ。
────赤は嫌いだ。
この世は残酷だ。だけど思い出すのはその中で尊い、掛け替えのない平和な日々。
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