2(2/2)



「ヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」

現れたのは栗色のフサフサした髪の女の子だった。前歯がもう少し小さければ可愛いだろうなとレイニーは思った。その後ろに泣きそうな顔の男の子がネビルらしい。残念ながら誰もヒキガエルを見かけていなかったレイニーはカエルが苦手なのでもし見つけてもつかまえることはできないが、見つけたらすぐに教えてあげようと思った。
女の子は誰も聞いていないのに家族に魔法族がいないこと、教科書を全て暗記したことなどをレイニー達に話しはじめた。とてもハキハキ話すのでレイニーは圧倒されていた。

「私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた達は?」
「僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」

ハーマイオニーはハリーの名前を聞くと目を丸くした。彼女はハリーのこともよく知っていて、ハリーが出てくる本のタイトルを3つも上げた。とにかくびっくりするくらい本をたくさん読んでいるみたいだ。

「あなたは?」
「私はレイニー…シェリダン」

先程のことがあったのでレイニーはファミリーネームを言うのを少し躊躇った。

「私、シェリダン家のことも本で読んだわ。シェリダン家は―――」
「『例のあの人』の仲間だ」

ハーマイオニーの声を遮ってロンが低い声で言った。隣りでハリーが息を飲んだのが分かった。レイニーはどうすればいいのか分からなかった。ハリーはどう思っただろうか。もうレイニーとは友達にはなりたくないかもしれない。

「それはどうかしら。仲間だったかどうかは定かじゃないわ。例のあの人は失踪する前に彼女のお祖父様とは疎遠になっていたのよ。それに、もし仮にあなたの言うとおりだったとしても過去の話ね」
「そんなのわからないじゃないか。シェリダン家は昔から純血主義で有名だし…」
「ええ、そうね。でも『例のあの人』との関係については確かにそう書いてあったのよ。あなた少しは歴史の勉強をしたほうがいいと思うわ」

ロンの言葉を遮るようにハーマイオニーが言った。
レイニーはぽかんとと間抜けな顔をしてハーマイオニーを見上げた。ロンはバツが悪そうにしている。

「あなたのお父様はすばらしい魔法薬をたくさん開発しているんですってね。ぜひお会いしてみたいわ」

ハーマイオニーはレイニーをまっすぐ見ていた。レイニーは目をパチクリさせて、なにか珍しい生き物でも見るかのような顔でハーマイオニーを見つめた。

「私の顔になにか付いてるかしら?」

レイニーは首をぶんぶん横に振った。なぜだろう。泣きそうだった。

「3人ともどの寮に入るかわかってる?私は絶対グリフィンドールに入りたいけど、レイブンクローも悪くないわね」

組み分けのことをすっかり忘れていたレイニーはどきりとした。胃が痛くなりそうだ。

「それじゃあもう行くわ。あなた達もそろそろ着替えた方がいいわ。もうすぐ着くはずだから」

レイニーは礼を言いたかったのにハーマイオニーはネビルを連れてコンパートメントから出て行ってしまった。

「どの寮でもいいけど、あの子がいないとこがいいな」

ロンはレイニーと目を合わすのが気まずいのかハリーのほうを向いて言った。

「私は彼女と同じところがいいわ」

レイニーの言葉にロンの表情が引きつり、ハリーが苦笑いする。ファミリーネームだけで判断しない人もいる。それがわかったことが嬉しかった。




20150109
*前次#

BACK
ALICE+