一話
私には前世の記憶がある。
なんて公言してしまえばすぐさま気狂い扱いされるだろう。
けれど本当だ。とはいっても私がそのすべてを思い出したのは三歳の頃。個性が発現したと同時のことだ。
最初は混乱した。今とは全く違う時代を生きたその記憶は、とても残酷で、とても暗く、重く、そしてとても幸せな記憶だった。
思い出してからは、昔とは違い思う通りに動かないからだに苛立ちを覚え、出来うるかぎりの鍛練をして昔に近づけながら、暇さえあれば他のみんなを探した。
でも見つけられなかった。
どんなに探しても一人も見つからない。
私のようなケースが稀だということは分かっている。もしかしたら会っても記憶がないかもしれない。そもそも転生なんかしていないのかもしれない。
でもそれでも探さずにはいられなかった。
記憶などなくても、側にいたかった。
寂しくて寂しくて、ただみんなにもう一度会いたかった。
けれど見つからず、それと比例するようにどんどん世界にたいして冷めていった。
この時代は個性というものを持った超人が普通に世間を闊歩し(かくいう私もそうだ)、ヒーローというものが職業になっていた。
ヒーロー、英雄というものが職業になっていると知ったときは複雑な心境になったのを覚えている。
どれだけ呼んでも誰も助けてくれない。
どれだけ足掻いても踏みにじられる命。
それを知っているからこそ、赤の他人を助けるということが職業になっていることを私は理解できなかったし、それをやっている人たちのことを理解することなんて出来やしなかった。