銀髪の彼が大嫌いな彼女は手段を選びません



ネタ帳の「銀髪の彼が大嫌いな彼女は手段を選びません」のお試し。


「やぁ。スコッチ」
「お前は……!」

廃れたビルの屋上で、一組の男女が向き合っていた。
一人はニコニコと腹の読めない笑みで、一人は汗をかきながら油断なく睨みつけて。どうにも穏やかとは言えない雰囲気を出している。

「それなりに一緒に仕事をこなしてきたというのに、挨拶もなしに出ていくつもりかい?悲しいな」
「………俺を、殺しに来たのか」
「命令としては出ているね。その前に情報を吐かせてからだと聞いたけど」

鋭い視線に、女はニコニコと殺気すらないまま受け流す。それでも目の前にいるのは組織の幹部。このままでは殺される。そればかりか情報を引き出され仲間や家族が危険な目にあってしまう。そう考えるスコッチは必死に脱出の隙を探すが、そんなものは全く見当たらない。

「それにしても、君は優秀だと思ってたんだけど、ノックとバレてしまうなんて意外とドジだったのかな?」
「っ!?俺がノックだと知っていたのか!?」
「当たり前だよ」
「っ…いつから」
「最初からだ」
「ならなんで報告しなかった!」
「する必要が無いからだ。情報が漏れようが組織が壊滅しようが、そんなこと私にはどうでもいい。」
「………」
「お前だけじゃない。組織に潜入しているノックはほぼ全て知っている。でも言わない。その方があいつが嫌がるからだ………だから安心しなよ。君のお仲間である安室透もとい降谷零にも手を出さない」
「!……あいつのことまで」

一歩。近づけばそれに比例してスコッチも下がる。

「お前は、何がしたいんだ」

その問にスティンガーは笑みを深める。
一気にスコッチとの間にあった隙間を埋め、驚く隙に両手を拘束して壁に押し付けた。

「私が何がしたいだって?そんなもの決まっている。あいつの、ジンの嫌がる顔が見たい。ノックの存在なんて教えてやらない。わざわざジンが喜ぶようなことをしてやるなんて嫌だね」

彼女の深い、深い。まるで闇のような黒の目にじっと射抜かれ、スコッチは吸い込まれるようにそれから目が離せなくなった。

「なんのためにお前達ノックに情報を流していると思う?なんのためにここに私が来たと思う?___お前を逃がすなんて、ジンへの嫌がらせには最高じゃないか?」
「は、………逃がす?」
「そうだよ。スコッチ、お前は優秀だ。きっと後々組織の壊滅の中心にいる。今までのノックは知らん。あいつらは意味がなかった。だけどお前なら、絶対に後にジンを苛立たせる存在になる」

何が何だか分からず困惑するスコッチに、スティンガーは悪戯っ子のような笑みを浮かべて離れた。

「さて、分かったらさっさと逃げてくれ。嗚呼そっちには組織の連中が捜索しているから避けろよ。この辺にライも潜んでいることだろうし、あいつもFBIのノックだから手引きしてもらえ」
「え、は?ライがノック……?」

鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌なスティンガーに、とりあえず警戒はするが敵意はないことが分かり言う通りに行こうとする。

「ありがとな。スティンガー」
「礼には及ばんよ」
「………思ったんだが、なんでお前そこまでジンに嫌がらせをするんだ?下手したら組織も壊滅するようなことも平然とするし。いや俺達にはありがたいんだけどな?」
「だから言っただろう。組織が壊滅しようがどうでもいい。何よりも、私、ジンのことが大っ嫌いなんだよ」


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スコッチ救出編でした。
こんな感じでちょいちょい助けて情報流して場を引っ掻き回せばいいと思う。

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