工藤新一もとい江戸川コナンの信望者


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「駄目だよ」
もう何もかもが嫌になって。死のうとしたその瞬間。小さな子が現れた。
その声は凛として、揺るぎない信念を感じさせる。まだ声変わりをしていないだろう少年の若い声だ。
俯いていた顔を声が聞こえた方向に向ける。そこには予想通り幼い顔があった。
「お姉さん。死んじゃダメだ」
「………放っておいてくれ」
「いいや駄目だ。見つけた以上見過ごせねぇ」
「君には関係ないだろ…」
なんだこいつ。こんな見知らないやつなんて放っておけばいいのに。どんなお人好しなんだ。
「関係なくない!目の前で死のうとしてる奴がいて、それを俺が見ちまったからには!もう関係なくないんだよ!」
向こうが放っておかないのなら、こちらが放って構わずやろうとしたら、怒鳴られた。と思ったら、脇腹に強い衝撃が来た。いきなりのことでその衝撃に逆らえず横に転がり落ちたが、ようやく止まって件の脇腹を見るとあの少年が張り付いていたことによって、あの衝撃が少年の体当たりによるものだと判断できた。
何故だか妙に冷静だ。先程まで感じていた焦燥感。絶望感。死のうという思いすらもうない。少年。彼の青い。空の色の瞳に捕まった瞬間。もう私は彼に囚われていたのだろう。
「死んじゃ何もかもが無かったことになんだよ!自分の存在も今までやってきたことも!自殺ってのは今までの自分を否定する一番ダメな事だって父さんも言っていたんだ!」
倒れた私の上に乗ったまま、必死にしがみついて説得を続ける彼の姿が、私にはどうしようもないほど輝いて見えた。
意思の強そうなその青く綺麗な瞳に、今は自分だけを映し、この輝く彼の行動は今自分のためのものだ。そう実感した瞬間。
「な、なんで泣いてんだよ…!」
「………え、」
指摘され、頬に手を伸ばすと、濡れていた。
「泣いている……なんで?」
こんな幼い子供に助けられて、諭されて、それで泣くなんて情けないと。早く止めなければ目の前で困惑する彼をさらに困らせてしまうと思い、止めようとするが、止めようとすればするほどとめどなく涙は流れてくる。
「っ、!」
胸が痛くて、目の奥は熱くて。もう何が何だか分からなくて頭がゴチャゴチャになったそのとき、暖かいものが私を包んだ。
「落ち着け、落ち着いて」
それが彼の温もりだと気がついたのは、先程よりも近い位置で彼の声が聞こえたからだ。
小さな手を精一杯伸ばして、完全には届いていないが、それでも背中には僅かに温もり。
「大丈夫だ。大丈夫」
大丈夫。大丈夫だと、私を落ち着かせるように小さな手で背中を優しく叩く彼。なんの根拠もない言葉で、そんな慰めのようなものを与えられるのは嫌だったはずなのに。なのに。彼から与えられたそれは、不思議とすんなり受け入れられ心に染み込んだ。
「き、みの……名前は?」
涙声で震えてしまったけど、意を決して名前を聞くと彼は起き上がって目を瞬かせる。そしてなんともまあ光り輝く笑顔で、高らかと言う。
「新一!工藤新一だ!」
「工藤、新一………」
忘れないよう復唱する。起き上がったために開いた隙間を埋めるように、今度は私が彼に抱きついた。
「うぇ!?」
驚いたように身を固くするが、すぐに背中に手を回して宥めるように背を叩かれる。
まるで縋るように、私は彼を抱きしめる力を強めた。
「ありがとう、ありがとう………もう少しだけ、このままでも、いいかい?」
「………いいに決まってんだろ」

工藤新一。きっと、この子が私の神様だ。



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以下オリ主に言ってほしい言葉。


「あの日。あの時。あの瞬間から。私の全ては彼の物なんだ」

「君の為に用意した。君の力になりたくて準備した。だから好きに使っていい。君の動きを阻害しないよう。君を手助けする為。その為だけの全てだ。」

「人脈も、人材も、情報網も、私自身も。全ては君の為に用意したものだ」

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