ある日の昼下がり。
街中から少し離れた病院の一室で、患者が目を覚ました。
「…ここ、は…?」
開け放たれた窓。太陽光を反射する純白い壁。
寝起き直後に眩しい。そう感じて目を覆おうと手を動かしたが。
「…なにこれ」
自身の手は記憶の中よりも青白くやせ細り、点滴の針が刺さっている。
いつ体調なんて崩した?
(いや、それより……)
「私、死んだはずじゃ」
耳に残る周囲の喧騒、悲痛な叫び声。
彼女が記憶を思い返している中、ノックの音と共に病室に看護士が入ってきた。
「白星さーん。こんにちは〜」
「あ、こんにちは〜…いや?おはようございます?」
「…!?」
「?」
返事した途端。看護士にすごい勢いで二度見された。
目を見開いて固まる看護士に気を使い、ナースコールを押す。
数十秒後、バタバタと廊下から複数人こちらに移動してくる足音。
「白星さ…」
「美空さん!」
「美空ちゃん!」
「空ちゃん!」
入ってきた直後に、血相変えて全員が話しかけてきた。
(お医者さんの声がかき消されてる)それよりも
「なんで此処にいるの?」
アニメのキャラクター達が。
私の言葉を別の意味に取った彼等は説明してくれた。
「美空さんは…交通事故に会って6ヶ月の間意識不明だったのよ」
「美空さん、ぼ…ボクを庇って代わりにっ…!」
「でも目が覚めて良かった〜!」
「ホントにねぇ〜」
「うんっ…!」
喜びの声が次々上がる中、美空は思った。
(私、来てしまったんだ)
様子がおかしい美空に気づいた医者が声を掛ける。
「白星さん?」
「…あ、あのっ」
「「「「?」」」」
「なんで、アニメのキャラクターのあなた達と、私が知り合いなんですか?」
「…え?」
「空ちゃん?」
「だっておかしいでしょう?!私は、私は…っ!向こうの世界で死んだはずなんだから!!」
気持ち悪い。視界がぐるぐるする。
居心地悪い。眼差しを感じて俯く。
苦しい。おかしい。息が出来ない。
たすけて
過呼吸になった美空は、病院着を握りしめベッドの上から崩れ落ちる。
その日から約一週間、彼女の病室は面会謝絶にされた。