そして少女は白馬を駆る(4)


「何で俺が」
「その道のプロに指導を仰ぐことがいけないことでしょーか?」
「…俺じゃなくても、そこで見てる奴等に」
「ガンマックス。忘れちゃったの?」
「Ah?」
「今度は自分から誘って来いって言ってたじゃん」
「!」
「つーことで。デート、しようぜ」


キラーンとポーズを取りながらも、真剣に返事を待つ美空。
ガンマックスは思考を巡らせた。

(何でこうなった。俺はただ、藤堂のおっさんに呼ばれただけで)

霧崎に裏切られて、周りの人間を信じられなくなって。
美空に出会って。
彼の心は、自らの感情の起伏に振り回され疲れていた。

「女の子にここまで言わせといて断んのは男じゃねえぞお。ガンマックス」
「……分かった」

周囲の人間がざわつくことすら気に障る。
彼女を紹介された時点で聞く耳持たず無視すればよかったのだ。
しかし。

「いよしゃああ!!」
「はしゃいで転ぶなよ」
「は〜い!」

案外嫌じゃない自分もいるのも事実だった。

「つーか同じコース回るだけなら暇じゃねぇか?」
「そう、かな?ガンマックスが一緒に走ってくれるから、そんなこと無いと思うけど」
「…もうお前喋るな」
「何で!?」

ニヤニヤと若者二人を見つめる藤堂主任は、走行テストに問題が無ければ公道を走っても良いと指示を出した。
お見合いで言う【後はお若い二人で】状態だ。

そんな意図に気付かない美空は単純に喜び早速バイクに跨り走り出す。
何周か様子を見て、バランスが安定していることを確認したガンマックスが走り出し、後ろから近づき側に付いた。


「何か久々の感覚〜!」
「アンタ、上手いな」
「ホント!?」
「あぁ。重心の無駄なブレも無い。これならすぐ高速も走れるだろうな」
「やった!」

楽しげな雰囲気で走る二人を見る大人達は、ガンマックスの態度に目を疑っていた。
刺々しい態度は鳴りを潜め、配属当初の素直さが見て取れたからだ。

「嬢ちゃんが、アイツに良い影響を与えてんだなぁ…」
「そうですね」

彼の心の傷は深く、整備士達ともあまり会話をしなくなったことを皆心配していた。
最初入り口にいた警察官達はハイウェイパトロール所属で、一時はどうなるかと思ったが。
彼等もガンマックスと少女の逢瀬を穏やかに見守っていた。

「次は障害物置いてあるコースに行こうぜ」
「ひぇえ…緊張する」
「最初はゆっくりで走れよ。しょっぱなから飛ばしたら怪我すんぜ?understand?」
「I ハブ taken ノーティス(理解した)!」
「よし。3分以内に一周な」
「まさかのスパルタ!?」
「ホラ行け」
「手で押さないでっ、危ないぃい!?」
「あははははは!」
「うぉおおおっと!?」

リアクション芸人顔負けの表情にガンマックスが腹を抱えて笑う。
美空の叫び声は、夕方まで響いていたそうな…。

fin.