距離感が分からない(1)

私はいつの間にか此処にいた。
あの場にいた見たこともないロボット達全員が、私を見下ろしていたのを今でも覚えている。

「えっと…こ、こんにちわ?」
「…メガトロン様。コノ人間カラ高純度ノエネルギーヲ感知」
「何だと?ふむ…其奴を捕まえろ!デストロン軍団!アターック!」
「そうはさせるか!サイバトロン戦士、トランスフォーム!」
「ひっ?!きゃああああ!」

銀色の威厳ある声をしたロボットが号令を発した途端、皆取っ組み合いの喧嘩(実は戦争)を始めたのがファーストコンタクトのせいか。
私は、サイバトロンという人間に好意的に接してくれるロボットに保護され数週間経過した今でも、彼等が怖かった。

「おはようなまえさん。」
「お、おはようございます。ハウンドさん」

そんな怯えてばかりの私を憐れんでか嫌がらせか。毎日面子を変えながら割り与えられた私の部屋に、誰か必ず1回は訪れて声を掛けてくる。
ロボット達の中で一番多いのは、穏やかに話してくれるハウンドさんと、小さくて可愛らしいバンブルだ。たまに色違いのクリフ君やビーチコンバーさんも来る。

「今日はいい天気だよ」
「そ、そうですか」
「絶好のドライブ日和だと思わないかい?」
「あぁ…」

部屋にはベッドにテレビ、シャワーにカーリーがくれたお古の服を入れるクローゼットや生活雑貨があり。冷蔵庫やキッチンまでついている。
実に便利で出たくない。
そう本気で思いながら冗談めかして部屋のお礼を言ったら、サイバトロン戦士には建築家がいるらしく。何人かを伴い部屋に押し寄せて来たため、少しの間面会謝絶にされていた。
つまり何が言いたいかというと。
お外は怖いから引きこもりたい、だ。

「スパイク君とおでかけしてくるんですか?気をつけてくださいね」
「いや、俺は君と出掛けたいんだ」
「…」
「司令官には許可を取っている。基地からそんなに離れないから、大丈夫だよ」

このやりとりは前にもあった。
その時はバイザーを着けたマイスター副官と呼ばれていたロボットだった。警戒心を解こうと色々話しかけてくれたのだが、私は彼の顔を見ることが出来なかったのだ。
理由は分かっている。あのバイザーが怖いのだ。
デストロンのサウンドウェーブ。彼の言葉が発端となり、私を巡る争いが起きたからだろう。彼も顔を隠していた。そのため、顔や目を隠しているから何を考えているか分からず不安や恐怖を感じるのだ。
でも、いい加減あの時のお礼を直接言いたい。

「…敵襲があったらすぐ逃げてくれる?」
「あぁ!勿論!」
「なら、うん。頑張ろうかな…」
「やったあ!」

子供のように喜ぶハウンドに顔が綻ぶ。他の面子にもお礼が言えたら、皆笑顔になってくれるだろうか。
なんて思いながら、私たちは基地を出た。

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