距離感が分からない(2)


「そいつを渡せ!」
「誰がお前なんかに!」


ミサイル攻撃の爆風が私の後ろ髪を巻き上げた。
部屋から出て、その時いた基地の皆にお礼を言い大層喜ばれた時の胸の温かさは、今恐怖に蝕まれている。

基地から出て数十分。
見晴らしのいい高台でハウンドさんとピクニックをしていたのだが、空を飛ぶデストロンに見つかってしまった。
彼は直ぐ様味方に応援を要請し、約束通り逃げてくれたのだが、時間稼ぎのホログラムも上から見られたらバレてしまう。


「くっ、振り切れない…!」
「さっさとそいつを渡せば、命だけは助けてやってもいいぞ?」
「断る!」
「そうか。じゃあ死ね!」
「うわぁあーっ!」
「きゃああああっ!!」

偉そうに話す戦闘機にトランスフォームしたロボットに攻撃され、私はハウンドの座席から投げ出された。
身体を強く打ち、息が詰まる。涙を浮かべながら痛みに悶えていると、身体が持ち上げられた。

「わっ!」
「やっと捕まえたぜ。ちょこまか逃げやがって。これでメガトロンに一泡吹かせることができるな」
「か、彼女を離せ…スタースクリーム」
「ケッ、まだ動けるのか」スタースクリームと呼ばれたロボットが、ミサイルを倒れている彼に撃とうとしたのが分かった。

「やめて!」
「……あぁ?」
「やっ、やめてください。お願いします」
「何で俺様が、お前なんかの言うことを聞かなくちゃいけないんだ」
「こ、怖いことされたり見せられると上手くエネルギーが使えないんです。貴方の言うことを聞きますから、もうひどいことしないで…」

泣きながらお願い、と伝える。
勿論内容はでっち上げだ。ただ、優しくしてくれた彼が傷付いて欲しくなかったから咄嗟に嘘をついた。

「……良いだろう。なら、これからはこの俺様、スタースクリームに忠誠を誓うんだな」
「ひっく、ふっ…」
「メガトロンの奴、どんな顔をするか!ハハハハハッ!」

そう言い、歩き始めるスタースクリーム。
もうハウンドさんの姿が見えない。これからはサイバトロンの皆と話も出来ない。

(基地にいなかったから、まだマイスターさんにお礼言えてないのに…)

心残りに、また涙が出る。

「そこまでだ!」
「なっ、コンボイ共!」
「間に合ったね!」
「サイバトロン戦士、なまえを助けるんだ!」
「おぉー!」サイバトロンの皆が崖を勢いよく下り、土煙をあげて突っ込んできた。
助けが来たことに安堵していると、

「これでもくらえ!」
「ウワァーッ!」

突如背後から突進された。
声から察するに、ハウンドさんが助けてくれようとしたんだろう。
怪我は大丈夫だろうか?なんて思っている間に、私はその衝撃でスタースクリームの手から空中に投げ出された。

「しまった!」
「なまえ!」

落下の衝撃を想像し、身体を強張らせていると。

「大丈夫かい?」
「ま、マイスターさん…」

名前を叫んで受け止めてくれたのはマイスターさんだった。
此方を見下ろす視線に思い出す。
数週間前、気絶する寸前の私を手に乗せ守ってくれたのも彼だったのを。

「助けてくれて、ありがとう」
「!」

視線を合わせ、自身の身体に添えられた親指に頬を寄せてお礼を言う。
ずっと伝えたかったと言葉を溢せば、彼は口を開いた。

「私は」
「なまえを救出したか!マイスター!」
「はい、司令官」
「ならば良し!撤退だ!」

言いかけた言葉はコンボイ司令官の撤退の呼びかけに遮られてしまった。

「…戻ろうか」
「はい」

スモークスクリーンさんの黒煙で目眩まししている間に、皆基地へ戻り始める。

「君が無事でよかった」
「でも、ハウンドさんが…」
「君が身を呈して時間を稼いでくれたおかげで、ハウンドも救助できた。基地に帰ってリペアすれば直る範囲の損傷だから、大丈夫だよ」
「そうですか…よかったぁ」

マイスターさんの中に乗せられ、肩の力が抜ける。
助けてくれたおかげだろう。前より怯えたり緊張しなくなったのが自分で分かった。

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