劇的に彩って(17)
「そうだな」
「…車を止めてくる」
「ありがとう三成くん」
滑るように発車する車。
目の前の建物は白い外観に周りは整えられた庭と森。雪に埋もれる木々の姿は粉砂糖をかけられたブッシュドノエルに見える。
「静かだな」
「うん…」
これからまた騒がしくなると思うと気が滅入る。
「入ろうか」
「うん」
前へ進もうとするとドレスに合わせた長手袋ごしに温もり。
「…!」
「みょうじさん。ワシにエスコートさせてくれないか?」
「っ…そこまでしなくても、もう、最初から怒ってないから。そこまでしないで。気に、しないで」
誤解される。
誤解、しちゃう。
「お願いだ…」
悲しげに呟いて、きゅ、と手を握る。
ずるい。
「じゃ、あ受付まで」
「ぁ、ああ!」
するりと手慣れた動きで私を連れて歩きだす。
「…」
あぁやっぱり。
彼と私は、違う。
エントランスに入るとかすがと市が迎えに来てくれ、腕は解かれた。
「大丈夫か?」
「…わかんない」
心臓がバクバクと激しく動いている。
「徳川、なまえを連れてきてくれたこと。感謝する」
「ありがとう、光色さん」
そうだ。まだ、隣にいるんだった。
「いや、送ってくれたのは三成で。ワシはただみょうじさんにお詫びを」
「そうそう!これでチャラ!…ありがとう徳川くん。友達が、ほら。待ってるみたいだよ?」
離れた距離で何か言ってる男子と、私を睨んでいる女子。
「早く行って…ね?」
くしゃり。
何故か徳川くんの表情が崩れた。
「……分かった」
そのまま彼は歩いていって人の群に囲まれた。
「…じゃあ、行こう!お腹いっぱい食べるぞ!」
「見苦しくない程度にな」
「気をつけなくちゃ」
しばらくして。
もりもり
「市、ハムスターみたいだよ」
「……」
「飲み込んでからにしろ」
「…美味しいね」
「そうだね」
ほのぼのそんな会話をしていると。
「ちょっとみょうじさん」
「…」
「何の用…?」
「なまえ、行くぞ」
「待ちなさいよ!」
高校在学中、嫌がらせしてきた奴らが話しかけてきた。
吐きそう。
「市、が」
「…私が行ってくる。ここで待っていろ」
壁際の椅子に座らされ、かすがは市のところに戻っていった。
「…主は」
「ぁ、…大谷くん。久しぶり」
「久方ぶりよな、みょうじ」
隣が分かり、肩の力が抜ける。
「病気治ったんだね…よかった」
「…主は、相変わらずのいじめられっこよな」
「…」
「美しくなったどこかのに妬んでおると見える」
「!?」
驚いて顔を上げる。
「ヒヒッ、ヒヒヒ!」
「大谷くん…酔ってる?」
「そうよ、我は酔っぱらいよ、酔っぱらい」
二人で上機嫌に話しているとどこか騒がしいのに気づく。
「…行ってくる」
「今日は無礼講よ。主の好きにするがよかろ」
「…うん、ありがとう。何か食べたいものあったら取ってくるよ?」
「主が食いたい」
「寝てろ」
「ヒーッヒャヒャ!」
そしてなまえは騒ぎの中心へと足を運んだ。