カラン、とグラスの中の氷が音を鳴らした。
グラスには後3分の1程薄い茶色い液体が満たしている。
本当はストレートでもイケる口なのだが、この飲み方が1番私は好きだった。
グラスと氷が触れる度になる音と氷が溶ける事で変わる口当たりを楽しむのがイイのだ。

まだ少しあるが今のうちに次を頼もうかとバーテンダーを見ると、心得ていたかのように目が合った。
次は何にしようかと迷いながら口を開いた時、低いのにどこか甘い色気を感じさせる声が降ってきた。

「それは、ライか?」

「え、ええ。でも、もう飲み終わるから次は何にしようかと…」

横に腰掛けた彼は、目つきは悪いが色気を感じさせる男だった。
これは何もせずとも勝手に女がよってくるタイプの色男だ。
つまり、私に声をかけたのはナンパではない。
一目見るまではナンパかと色めきだった感情は一瞬で冷静になった。

「ウイスキーが好みなのか?」

「ウイスキーが好み、というよりはライが好きなだけよ。甘すぎるのでなければカクテルも飲むし」

「ふむ…、なら彼女にはアイ・オープナーを。甘さは控えめで。俺にはバーボンを」

「アイ・オープナーとバーボンですね」

頷くと、バーテンダーは手際よく作り始める。
勝手に決められてしまったが、なんと答えていいのかわからず黙ったままバーテンダーが作る様子を見つめる。

「ラムがベースなのね」

「ああ。飲んだことは?」

「ないわ」

「そうか、口に合えばいいが」

「そうね…合わなかったら合うものが出てくるまで付き合ってもらうわ」

暗に気が済むまで奢ってもらうぞ、と軽口を叩けば余裕な表情で笑い返された。

「上等。好きなだけ頼めばいい」

「…自分で頼んだら意味がないじゃない」

どきりとした感情を誤魔化すように視線をそらして言うと横から押し殺したような笑い声が聞こえてきた。

「あなた…いい性格してるのね」

「ああ、よく言われる」

「…はぁ、あなたには勝てそうもないわ」

結局、たった1杯のカクテルで私は釣られた。
選んでもらったカクテルが私好みだったから、とでも言い訳しておこう。



「んんっ、…ね、…あなた…いつもこんな風に女を引っ掛けているの?」

「いや?あいにく、俺は洒落た言葉を言えるほど器用ではないんでね」

「どの口が言うのかしら」

「この口だが」

「!んぅっ、あっ」

口付けが深くなり、器用に舌が口の中を這い回る。
予想外の丁寧な愛撫に腰が震えた。
大きな掌がしっとりと汗をかいた肌を這っていく。
太ももを撫でるようにして足を広げられ、濡れたショーツに触れられるとビクリと身体がはねた。
水音が聞こえた気がして、恥ずかしさを誤魔化すように男の首に手を回し自分から口付けた。

「ん、んん…、っ!」

「すごいな、ここに入れたら気持ちが良さそうだ」

男の太い指を締め付けると感心したような声と喉を鳴らす音が聞こえた。
目の前の男が私で興奮しているのだとわかるとゾクゾクした。
先程ちらりと見た男のモノは今まで見た誰のモノよりも大きくて、ソレが私の中でさらに大きくなるのかと思うと自身も興奮する。
わざと腰を擦り付けると男は目を細め低く笑った。

「…意地悪なのね。はやく、ちょうだい…あなたのコレ」

するりと男のモノを撫でるとビクリと男のモノが震えた。

「そうだな。俺も限界だ」

男はそれまで余裕を見せていたのが一変、ゴムをつけると一気に挿入してきた。

「っ!ちょ、もっとゆっくりっ」

「言っただろう限界だと」

「だからって、激しっ!あん!ぁあ!いやっ!んんっ」

長くて熱いもので抉るように激しく出し入れされ目の前がチカチカする。
こんな風に訳が分からなくなるのは初めてで助けを求めるように目の前の身体に抱きついた。

「はっ、ぁ…どうした?」

「はげ、しすぎ…もう少し手加減して」

「ぁ、あ…すまない。どうやら、少し興奮し過ぎていたようだ」

ゆるゆると、腰を回され、それだけでも声が漏れる。
この男と自分では体格差がありすぎる事に気がつく。

「まるで食べられているみたい」

「正確には喰われているのは俺だがな」

低く笑いながらも奥に押し付けるようにグリグリと動かされるとたまらない。
激しさはないけれど奥の奥まで押し広げられる感覚に、この男としてしまった事を後悔した。

「なんだ、その顔は?」

「あなたとした事を後悔している顔よ。…こんなの知ったら他じゃ物足りなくなりそうだもの」

「そうさせるつもりだが?」

「え?ぁ!ちょっとまだ、あ!ぁん!んん!」

再び激しくなった抽送にすぎる快感が押し寄せてくる。
重ねられた唇になんとかこたえながらも、頭の中は何も考えられなくなる。
ただ、ひたすら目の前の男を感じる事に夢中になった。
何度も意識が飛び、戻され、を繰り返し快楽の波に溺れていく。



目を覚ました時には彼はもう既にいなかった。
何となくわかっていたとはいえ、冷たくなった隣のスペースをそっと撫でてこっそりと泣いた。




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