序説

自分の番号を掲示された紙から探し出した時の興奮は今はもう、ちゃんと思い出せない。

私の目標はその日から無くなった。



今は単位をとって、本を読んで、歌って、楽器を奏でて、それだけを淡々とこなすだけの毎日。

本を読むことも、歌うことも、奏でることも、すべて「日常」と化してしまった悲しき事実。



今夢見るのは、趣味でありながらもどこかの大舞台で、何百人ものお客さんを前にして、自分の音楽を奏でたい…なんて。





────そんなの、毎日がつまらないからそんな夢見事が言えるんだ。



自分に嫌悪感をいだいて、帰路を急いでいる途中。



「っわぁ!」

「──す、すみませんっ」



急に角から飛び出てきたその人に、



「ああっ─!!!」



私の楽器を壊されました。