人食い鬼 1



夜。
一人の青年が歩いていた。
制服を着ているようだ。

「早く帰らないと……」

時刻は日付を跨ごうとしている。
足取りを早くする。ここの道にはある噂があった。

「ここの道歩いてると、何かに食われる、とか……ありえないよなぁ」

青年は口にする。最近、起こっていたりする事件。人間の贓物がなくなる、というような内容だった、と思い出す。

「うう……早く帰ろう」

寒気がした彼は早く家路につこうと早足になりかけた。その時、

「ん?」

何か音が聞こえたような、気がした。グチャ、とかそんな音が。
気のせいか、と考えたが彼は耳をすませた。
確かに聞こえた、グチャグチャ、と生々しい音。
薄暗い路地裏から聞こえる。

「何、この音……」

青年は一瞬ためらったがちょっとだけ様子を、と路地裏に足を踏み入れる。
だんだんと近づく音に耳を塞ぎたくなったが、あまり音をたてたくなかったので我慢した。
奥は確か行き止まりのはずだよな、と音がする所までたどりついた彼は、顔をそうっと出して――驚愕した。
そこには人間がいた。いや、何か人間にしてはおかしい。雰囲気が、というのもそうだが、人間にしては右手が大きかった。爪も鋭く伸びている。
背後からで顔とかは見れない。
爪で何かを引き裂く。グチャ、と嫌な音がする。それを壁や地面にたたき落としたりしていた。時には何かを口に含み、咀嚼するような行動もとっていた。
見なくても彼は分かった。これはさっき思い出した、あの事件の――思わず、後退りしてしまい、パキッと音を鳴らしてしまう。
まずい、と思う前にその人物がこちらを振り返っていた。
月明かりに見えた人物の頭には二つの角らしきものが生えてる。
普通の人間ではない、何か。
逃げないといけないのに体が動かない。
そして、彼が意識を持っていたのはここまでだった。
悲鳴すら聞こえない。
静かな夜がまた訪れた。








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