人食い鬼 5
数分もかからずに目的の場所の近くで圭一郎は車を止めた。彼が先に現場へ向かうのを見送った後、零姫と霜月は車から降りた。
少し遠いが、人だかりが出来ている事が分かる。
零姫は車に寄りかかり、言う。
「おいおい。どんだけ人いるんだよ……」
「しょうがないんじゃないかにゃ〜?なんたって人が死んでるんだもん」
「死体発見からどれだけ経っていると。テレビ局の奴らもいるし……」
「まあまあ!細かい事は気にするな、だよレーキ!」
ニヒッと楽しそうな笑みを作る霜月に本当に何度目か分からないため息を零す。
「篝、大人しくしてなよ?」
「分かっている」
「いい子いい子」
自分の肩に軽く触れるように動かすと、そこから篝がにゅ、と顔を出した。
「零姫、それは――」
「いいじゃない。気にしない気にしない。さて、行くぞ」
篝の言葉を遮り、零姫は言った。表情では分からないが、篝の雰囲気があきれたような空気をだしていたが、彼は首を引っ込めると彼女の髪で篝の姿は見えなくなった。
「んじゃあ、行こう」
足を進めると、だんだんと人が多くなる。アナウンサーが何か言っているが、特に気にとめない。
ある程度近くまで来ると、そこで足を止める。ちょうど、黄色いテープが見えるくらいの位置。
「この先だったな、殺害現場」
「あの死体があった場所、さすがにここからじゃ見えないね〜」
「当たり前だろ。狭いうえに暗い。それに曲がった所だ、現場」
「路地裏使うなんて犯人も賢いにゃ〜」
二人の視線の先には警察が何か作業をしていた。その中には、圭一郎もいた。
しかし、怒られていた。それはそうだろう。何せ、現場ではなく零姫の家に一番最初に来たのだから。
零姫はあきれた顔をして、言う。
「あいつ見てると何か、疲れるな……」
「圭ちゃんだからしょうがないよ〜にゃはっ」
楽しそうに笑う霜月にもあきれてしまう。
「あんたら幼馴染コンビは……」
「にゃははー」
「やっぱり夜だな」
「そうだねぇ。まあ、て、あ……」
霜月は視線を前に向けると、小さく声を上げる。すぐに零姫に視線を戻し、
「レーキ、あのさ、えっと」
「なんだよ…言いたい事はちゃんと言え」
「うんじゃあ、言うけど……逃げた方がいいんじゃない?」
指を前にさす霜月の指を辿り、零姫もその方向を見て、彼女は嫌そうな顔をする。
「げっ……」
「三途河さんじゃないですか!!!!」
一人の警察官がこちらに近づく。圭一郎ではない。彼はその零姫に近づいてくる警察官の後ろで困ったような顔でついてきていた。
零姫はその圭一郎の表情から察した。
「あんのヤロ、話したな」
「圭ちゃんは嘘が苦手だからねぇ。苦手、じゃなくて出来ない、かにゃ?」
「あーだから来たくなかったんだよめんどくさい」
「三途河さん、お疲れ様です!」
そう言って敬礼する警察官。黒い短い髪、爽やかな雰囲気。そして男性としては少し細身だが、制服がとても似合っている。
顔は女でも男でも好かれそうな感じがする、のだが、零姫はこの人物が苦手だ。
苦手というよりも、何ともいえない感じだった。
「あ、えっと、お疲れ様……大道寺さん」
頬を引きつらせつつ、そう警官――大道寺に言う。
「三途河さんもいるなら言って下さればいいのに…」
「いえ、警察の仕事を邪魔する気はないんで。大道寺さんも早く仕事に戻った方がいいよ」
「あ!じゃあ行きましょうか現場に。ご案内します!」
「いや、だからあたしは」
「三途河さんみたいな探偵さんがいてくれると安心しますね」
大道寺は零姫の事をどうやら探偵か何かと思っているようだ。
その勘違いを直そうとしても覚えてもらえない。頭が固いというかなんというか、と零姫はこめかみに手をあてる。
そんな零姫を横に、霜月は楽しそうに言う。
「レーキ、現場見せてもらったらどうかにゃーせっかくだし」
「あんた、楽しんでないでしょうね…?」
「楽しんではいるけども、一応現場は見とかないと?」
「まあ確かにそうだけども…それは…」
「では行きましょうか。こちらです!」
大道寺が歩いて行くあとを圭一郎と霜月がついて行く。霜月はにゃはーと本当に楽しそうだ。
「…よし、後であの二人には説教だな」
地をはうような声をその場で出すと、三人の後を追った。
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