泥濘に花を植える(10)
「ペロスペローさん!?そんな、頭を上げてくださいっ」
「彼女は気にしてないみたいだし、その必要は無いんじゃあないかなァ」
「お、おじさま?」
「決めるのは由梨菜様ですので。お迎えの方は関係ないのでは?」
「ペロスペローさん?!」
──所変わって玄関ホール。
対峙した両者の会話は穏やかでない雰囲気が漂っていた。
"異人"の戦いは天災と同義であると、かの天才科学者ベガパンクは評した。由梨菜は焦って周りを見渡すが、周りのメイドや従者は皆揃って下を向いていた。"異人"同士の争いが始まるかもしれなかったが、礼儀を欠いた行動は厳禁と命じられた彼等は逃げたい衝動に駆られていても、この嵐が過ぎ去るのを待つしかできない。
その雰囲気を感じ取った由梨菜は、思いつくままに言葉を発した。
「ペロスペローさんやカタクリさんにはお世話になってばかりですし、今日これ以上そちらからの歓待は遠慮させていただきます!」
「…そうか」
「はい。なので」
「ウン?」
「もしそちらの都合がよろしければ、私の通っている学校の文化祭に招待したいのですが…」
既に成人し自分たちの店まで持っている彼等にとって、文化祭など学生のお遊戯に過ぎないだろう。来るも来ないも自由だ。この言葉はとっさに思いついた、平和的解決を目的とした社交辞令だった。それに食いついたのは、カタクリだった。
「必ず都合をつけよう。日付は、今度店に来た時に教えてくれ」
「えっ」
「……君ねぇ〜」
争うような空気は霧散し、呆れたような声が頭上から掛けられる。反応し顔を上げると、目の笑っていないボルサリーノが見下ろしていた。
(あ、これは後でお説教の予感)
そっと由梨菜は身震いした。