白の傘


海賊との戦いは命のやり取りが多い。

私は戦うのも、人を傷つけるのも、訓練も苦手。
しかし、人の役に立つのは好きだった。
周囲の人の笑顔を護りたいと思い、衛生兵として志願した。
時に怒鳴られ、泣きながらも努力を続けること約1年。やっと本部にも同行を許されるようになった。

でも、

「離してください。仕事があります」
「いつ終わるんだい?よかったらこの後食事に行かないか?」
「時間は分かりません。申し訳ありませんが」
「まぁまぁ。少しくらい息抜きも」
「まだ仕事が残っていますので」

ここで苦手なものが増えてしまった。
手当てを優しさと勘違いした海兵が段々絡んでくるようになったのだ。

(薬品とリネンの補充をしに来ただけなのに)

上司は厳しい方だ。サボっていると判断されたら…。

「いっ─!手を離してください」
「何してる」
「それは…!?」
「いい身分だな。そんなに暇なら変わってほしいくらいだ」
「スモーカー大佐…!」

(あ、今日死んだな)

全身筋肉痛の未来が見えた気がして、私は俯いた。


「大丈夫か」
「えっ?」


呼びかけられ顔を上げる。いつの間にか絡んできた海兵はいなくなっていた。
ほっとして強く掴まれていた腕を擦る。治りかけの捻挫がじくじくとまた痛んでいた。

「すみません、お手間をおかけしました。大丈夫です」
「テメェの部下のことだ。別に手間じゃねぇさ」
「困っていたので、助かりました」
「…そうか」

足元に散らばってしまったシーツを拾う。
せっかく洗い終えていたのに汚れてしまった部分を見つけてしまい、気が滅入る。
仕事はまだ残っている。本部での訓練は普段よりもさらに厳しく、休憩に入るのが遅くなると訓練時食べたものを吐く確率が上がるのだ。

「医務室に用か」
「はい」

(あーあ…)

溜息を胸元で我慢し立ち上がると、腕の中が軽くなる。

「あっ!?」
「オレも用があるからな。ついでだ」
「でも、あの…」
「手。まだ治っていないだろう。このまま休憩に入って湿布でも貼っとけ」
「…すみません」

(気づかれてたのか。敵わないなぁ…)

申し訳なさと気まずさを感じながら、私はスモーカー大佐と基地の中を歩いた。