先週から降った雪が固まり、透明な轍になっているのを見つめながら歩く。
「はぁ…」
今日はお付き合いしている人の誕生日。
一緒に過ごす予定を断ったくせに、溜息が止まらない。
「でもパーティになんて行けるわけがない!!!」
周囲の目がこちらに向いたのを知らないふりをして、早足で横断歩道を渡る。
(あれはきっと社交辞令、社交辞令)
相手は前職の胡散臭い上司も真っ青な御曹司様。パーティには家族や会社幹部に著名人とかも来ると聞いた。
ただの一般人がどれだけ場違いになるか。こちとらアンタの会社の派遣社員なんだよ?
プークスクスなんてされた日には精神的に死ぬ。彼に幻滅された日には五臓六腑ぶちまけて汚い花火になる。
あれ?行かなくても生意気だって派遣切りされるんじゃ?ハッピーデスデイ私。社会的に爆発四散は最低条件だね。
「サプライズも失敗したし…いや、隠していたから成り立たなかったのほうが正しいけど」
お付き合いの経験が少ないせいか。祝いたい気持ちが先走ったか。
相手の予定を聞くとか気遣いが足りなかったんだろう。
こっそりと予約していた店はどうにかキャンセルできたが、用意したプレゼントの受け取りは今日を指定していた。
今日が本番。勝負の日と豪語していた勢いはもうない。
「言えるわけがない」
何の因果かお付き合いしていただいているけれど、私は偶然、彼の演じている"完璧"の綻びを見つけてしまっただけの女。
二人きりでお祝いしたいだなんて、言えるわけが無いのだ。