霧と超常現象に包まれた街、H・L。
ヤバさの臨界点を毎時更新中のイカれた都市で、日々弱き者を守るため奔走する警察官達は、その日も胸に正義を持って業務にあたっていた。
「──被害者は
取調室の机が貧乏ゆすりで音を立てている。プラス時々身じろぎと舌打ち。一定のリズムで刻まれ続けているが、それを止める者はいない。
「笑いたきゃ笑え」
「……ぐふっ」
「あーーはっはっはっはーーーーっ!!!」
何故か目の前で爆笑される被害者の機嫌と比例して口角がへの字になっていくが、警察官達の笑い声は止まらない。某日早朝に発生した異教徒集団の黒ミサを止め、撤収時に起きた事故により、ダニエル・ロウ警部率いる部隊は違法魔術をかけられた。鑑定では無差別に選定された対象aに付与される魔術刻印から発生する命令を受け取り対象bはうんたらかんたら───つまり、
「大丈夫?淫紋兄さん」
「黙れ」
「ごめんなさい」
一部の同僚・部下から熱い雄叫びを上げながら迫られた"被害者ダニエル・ロウ警部"は、素直な双子の弟に鋭く言葉を吐いた。頭が痛い。これでは捜査に参加できない。不幸中の幸いで相手が
「兄さんはしばらく非番だってさ」
「こんな状態で表出たら大混乱だろ」
「修羅場になっちまいますね」
「違いない」
「恋人と甘い時間をお過ごしください」
「爆発しろ」
「どんくらい持つかデータ取りたいんですけど」
「散れ変態」
面白がりながらも同情的な上司思いの取調官達は、何か分かったらすぐに知らせると約束し、ダニエルをパトカーで自宅へと送った。帰宅時も一悶着あるのだが、これ以上は横道に逸れてしまうので今回は割愛するとしよう。