年下の恋人が目の前で唖然としているのを見て、ダニエルは奥歯を噛み締める。
彼女が何の意図もなく行った"擦る"という行為が、見事なまでに彼に快感をもたらした。
事前に鑑識から説明を受けた時は耳を疑ったものだが、
(こいつはヤバ過ぎる)
仕事にかまけて発散していなかった熱が身体を這いまわっていた。
今は嫌悪を表情に出されていないが、ティーンの恋愛のような付き合いをしている自分達は今後どうなってしまうのか。熱に浮かされた脳みそは思うように働かない。できるのは、恋人に愛想を尽かされないよう願うのみだった。
「移動は苦ではありませんでしたか?」
「あぁ」
まだ陽の高い彼女の寝室は健全な雰囲気で、それでもどこか甘い。
握られていた手が離れてしまうのを黙って目で追っていると心配そうな眼差しを感じた。
もっと自分を見てほしい。触ってほしい。また気持ち良くしてほしい。
「自分でお洋服脱げますか?楽な恰好をした方が……!?」
言われた通りにコート、ネクタイ、ベストと脱いでいく。ごくりと喉を鳴らして此方を見るなまえ。彼女の視線がとある場所で止まる。既に勃ちあがったそこに、刺激が欲しくてたまらなかった。
「それで?どうなったんです?」
「この通り。現場復帰可能な状態になりましたよ、と」
野次馬根性剥き出しの取調官の頭を引っ叩きながら、煙草のフィルターを噛む。ヤニの煙が辺りを漂っているが知ったことか。
「まぁいいです。鑑識からの結果出ましたよ」
「で?」
「魔術刻印の命令は催眠。対象の魅了、あと"素直"になることでした」
「クソが」
「アハハ!そんで、解除命令式が……」
「何だ」
黙り込んだ部下にイラつきつつ報告の続きを求めれば、そいつは口を開いた。
「対象を大切に愛すること」
「は?」
「真顔で言うのきついっすねコレ。嫌なことをしない、だそうですよ」
仲がよろしいようで何よりです。そうのたまう独り身の部下は、最後に爆発しろ!と叫んで取調室から出て行った。
一人になった室内で、灰皿に吸い殻を押し付ける。
───彼女に花を贈ろうか。あの日の恋人の姿を思い出しながら、俺は机に突っ伏した。