04
「何だ?この痣は…」
腕、袴から覗く白い脚。そして首筋を一周する太い痣。
喜びから束の間、ダニエルは犯罪者を相手取る時の顔つきになった。
「異次元空間から出現した女性は意識不明だ。監禁、日常的な暴力を受けていた可能性がある。救急車を回せ」
無線の相手に指示を出し終えると、意識の無い彼女を抱き上げる。
(…軽いな)
到着した救急車に共に乗り込むと、病院へと向かう。
運搬中に検査を行うと、呼吸や脈拍数は安定していた。
しかし、華やかな着物を脱がせると、車内の空気が固まった。
大小様々な青痣が、胸元から下にかけて広がっている。
元々白かった肌が古い傷痕と痣で変色し、痛々しさを視界に焼き付けんばかりに主張してきた。
「酷い…外から見てバレないように暴行していますね。刃物による裂傷、防御創があります。この火傷は…煙草だ」
「1・2年で、ここまでなるものか?」
「詳しい検査をするか、本人に話を聞いてみなければ分かりません。…ただ、一つ言えるのは。幼少から虐待されていた場合、すでに死んでてもおかしくない状態です」
「!?」
救護員の言葉に目を見開く。
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が出る可能性があります。事情聴取の際は、彼女の反応に注意してください」
「分かった。首の痣は?」
「絞められた跡ですが、これは他の傷と違い直前のものでしょう。呪術が施されています。どのような効果があるかまでは…」
「そうか…結果はいつ頃出る?」
「専門家に見てもらわなければなんとも言えません。結果が出たら連絡します」
「頼んだ」
「彼女はおそらく"次元聴閲者"です。しかも生きた。今後は…その……」
「対応は追って伝える。悪ぃな」
処置室へと運ばれた彼女と別れ、ダニエルはHLPDに連絡を取った。
「女性は次元聴閲者の可能性がある。意識回復したら聴取すっから準備しろ。…あと、女性警官にも声かけておけ」
《了解》
通話を切り、溜め息を吐く。
生存者に喜んでいたのに、今度はその生存者が実験動物になるかもしれない。
彼女は既に、あんなにも傷ついているのに。
頭を掻き、ダニエルは歩き出した。
(やはりこの街はクソッタレだ)
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